ガンバレ日本! GDC2011@サンフランシスコに行ってきた!:くねくねハニィの「最近どうよ?」(その40)(2/3 ページ)
「ソーシャルゲーム」と「スマートフォン」
さて今年のGDCのキーワードは? と問われると、「ソーシャルゲーム」と「スマートフォン」とハニィは思っております。2009年からiPhoneを含むスマートフォン向け、また2010年ではソーシャルゲームがフィーチャーされたことを引き継いだもので、目新しさには欠けた印象。
しかし、特にiPhoneのだけが注目されていた2009年に比べると、Xperiaなどのスマートフォンが出そろい、ゲーム開発者がターゲットとするプラットフォームとして認知されたともいえます。1億回もダウンロードされたと言われる「Angry Birds」の開発元Roivo Mobileの講演では、モバイル発同コンテンツのコンソールへの移植など、新しい波を予感させる話題がありました。
また、資産価値でエレクトロニック・アーツを上回ったと昨年10月に報道された、ソーシャルゲームのキングであるZynga社のプレゼンスも圧倒されるものがありました。Facebookでの「FarmVille」、と、これからローンチする「CityVille」の講演があったのですが、まさに時の「ネタ」ってことで、あっという間に立ち見が出るほどの盛況ぶりでした。
いずれにしても、ソーシャルゲームはゲーム産業の「これから」に関連するジャンルであることを認められたようです。
海外のゲーム会社は、この手のビジネスに対して、自社でイチからやろうとせず、新興のソーシャルゲーム会社を買収しちゃうことが多いのですが、日本はなかなかそうもいかないようです。ゲームプラットフォームやジャンルに縛られている日本のゲームデベロッパーやパブリッシャーがこの呪縛から解き放たれて欧米を席巻するのか、はたまた別の業態として共存するのか、今後興味のあるところです。
Expoは大盛況
GDCでは、講義群の他にExpo(展示会場)が並行して開催されています。E3のExpoと違うところは、「タイトル」ではなく「テクノロジー」を見せるところという点。欧米ではハイスペック機での開発がすっかり慣れてきて、新しいチャレンジをしたり、クオリティを上げるために何をするかと考えれば、第三者技術を上手に取り入れていくという流れになるのは必然なようです。
そこで展示者側もその要望に応えるべく、各ブースで実際に使われてるゲームを例に挙げてデモをしているのです。昨年同様、描画エンジンは盛況でしたが、大きなところでは、Epic gamesのUnreal3の大幅アップデート、Crytek社のCryEngine 3、コンパクトで安価なイメージのUnityや、Idea Fabrik社のHero Engineなどがフィーチャーされていました。
特にUnityは去年よりブースが大きくなっており、勢いがある感じがするなぁと思っていたら、GREEプラットフォームとして採用されていました。さらに、ソニー・エリクソンのXperia Playのパートナーとなったことも発表されビックリ。iPhoneのゲームエンジンとして注目を浴びていた同エンジンは、PS3やXbox 360でも採用実績を積んできており、マルチプラットフォーム向け描画エンジンとしては「ブランド」が確立されたという感じです。
こんなテクノロジーの展示会を横目に、Career Pavilionも。いわゆる公的なヘッドハンティングの場なのですが、会社の出張費で出張しておきながら転職先を探す場があるという日本では考えられないイベントということが分かります。
終身雇用を前提としていない欧米では、ジョブホッピングこそがキャリアアップの道と考えると仕方がないのかもしれません。採用する企業も、クリエイターが引き抜かれてしまう会社も、お互い様ってことで暗黙の了解なのかも。
この他、Game Connectionなるビジネスマッチングイベントでは、日本の開発会社も多く参加していまして、欧米のパブリッシャーとミーティングをしていました。E3のカオスな状況とは異なり、静かな雰囲気でビジネスミーティングができると言う意味では価値が高いかもしれません。
キーノートスピーチ(基調講演)
現地時間の3月3日(水)午前9時から任天堂の岩田社長の基調講演が行われました。このとき、Appleのスティーブジョブズ氏が「iPad2」の発表をしていたのも話題になりました。岩田社長のGDCでの基調講演は今回で4回目とのこと。いつもお土産をくれるので、楽しみにしていたのですが、今回はなかった……残念です。
岩田社長とNOA(Nintendo of America)のReggie Fils-Aime社長が、1時間にわたって話した内容を、ものすごく簡単にハニィなりにまとめてみます。
1.ニンテンドー3DS
北米での発売を3週間後に控えて、ニンテンドー3DSのサービスについていろいろと発表しました。
- Netflixとの提携
昨年E3で、NBC Universal、Disney-ABC Television Groupとの提携を発表しましたが、今年のGDCでは全米で映画&テレビ番組をストリーミング視聴できる定額制のVOD(Video On Demand)サービスを提供してるNetflixと契約締結。
ユーザーはニンテンドー3DSでメガネをかけることなしで、3D映像コンテンツを鑑賞できるわけです。自社コンテンツにこだわって、あんまり他社サービスと提携ってことをしてこなかった任天堂だけど、時代の流れには勝てなかったのでしょうか。
ちなみに日本国内では、日本テレビとフジテレビと提携して、3D動画を毎日配信するサービスを「ニンテンドーeShop」にて対応するらしいです。この「ニンテンドーeShop」、本年5月から稼働予定なので、楽しみです。
- AT&Tとの提携とKindleモデル
全米に1万以上のWi-Fiアクセスポイントを持つ米通信大手AT&Tとの提携が発表されました。Wi-Fiスポットにいれば、ニンテンドー3DSから自動的にインターネットに接続ができる。ここで、ハニィが驚いたのは、任天堂がものすごくさらりと「キンドル(Kindle)モデル」を採用したと発表したこと。日本ではそれほど馴染みがないけど、KindleとはAmazonが導入した電子書籍リーダーデバイス、およびそのサービスのこと。
あらゆるデバイスでコンテンツをダウンロードするときは、純粋にコンテンツ部分のみ課金対象で、ユーザーは別途通信費用を負担しなくてはいけなかった。コンテンツが無料でも、ケータイのパケット代や、インターネットISP費用はかかってたわけです。
Kindleのビジネスモデルが画期的だったのは、これらの通信費用を含めた「コンテンツがダウンロードできるまで」の費用を、課金するコンテンツ代金に含めたということ。ユーザーは電話回線やWi-FiのISPとの契約の必要がないのです。
ハニィは、このサービス形態を選択した任天堂の「お客様志向」にとことんこだわる姿勢に脱帽。ユーザーはコンテンツ代だけでニンテンドー3DSにコンテンツをブチ込めるわけです。
2.イノベーション
GDCということもあって、岩田社長が昨今のゲーム開発における問題点として下記の3つを挙げました。
- プロジェクトの巨大化に伴いゲーム開発が複雑になって、ゲームを磨くこと(作り直しなど)が困難になった。この環境がクリエイターの才能(職人芸)を引き出せないことにつながっている。
- また、それぞれの開発過程での専業化が進んだことによって、それぞれの作業者がプロジェクト全体を把握するのが困難になったことを憂いている。今後ゲーム開発を担っていく人材がこの環境でどうやって育っていくのか。
- 無料もしくは低価格のダウンロードゲームやソーシャルゲームの出現により、「ゲームソフトの価値」を維持することが難しくなった。「量こそ利益の手段であり、価値は大した意味を持たない」スマートフォンやソーシャルネットワークのプラットフォームと、任天堂の考える「ビデオゲームソフトの高い価値を維持するプラットフォーム」では考え方が違う。
岩田社長は、この問題に対するソリューションを「イノベーション」と語ります。それは、「不可能だと思っていることを可能にする」ということ。何かを不可能だと思って受け入れてしまうのではなく、常に「可能にできないか?」と自問し続ける……。それこそが究極の解決策であると。
本年GDCのキーワード、「ソーシャルゲーム」と「スマートフォン」に対する差別化を明言するあたり、出席者にはどう聞こえたのでしょうか。
プラットフォームから設計している任天堂ならではの発想とも言えるけど、勝てば官軍と言われるプラットフォーム戦争の中で、必ずしも任天堂がサードパーティも含めて救ってくれると言う訳ではありません。ビジネスを考えるにあたっては、マルチプラットフォームに供給するサードパーティやデベロッパーの立場では「そうだ!」と声高には同意できない人もいるのではないでしょうか。
SCEは?
では、SCEの動向にも触れておきます。
1.NGP(Next Generation Portable)
日本国内では既に1月27日の「PlayStation Meeting 2011」にて発表が行われたNGPですが、アメリカではこのGDCが初披露。Expo会場での展示が行われていました。
また、開発者向けのセッションでは、基本的なスペックの紹介に加えて「Near」機能の紹介もありました。通信を使った位置情報で、ソーシャルコンテンツへの運用が可能になったとのこと。GDCだから、開発機材についても触れられていたよ。位置情報やモーションセンサーを使ったゲームのデバッグやテストを効率化するため、DevKitとCommanderを双方兼ねた1ユニットで提供されると発表してました。
2.Move.me
ゲーム開発者でなくとも、PlayStation Move、PlayStation Eyeカメラ、PS3のアプリケーションをPCで開発できるツールが発表されました。主に研究者をターゲットにしているようだけど、プラットフォームのオープン化はますます進んでいるみたいです。
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