「ICO」&「ワンダと巨像」ファンのための超ディープな裏話満載――「Great Scene Sharing」キャンペーンプレミアムイベント(1/3 ページ)
HDリマスター版の発売が決定した「ICO」と「ワンダと巨像」。それを記念して、その製作に関わったディレクター上田文人氏と外山圭一郎氏によるスーパーディープな対談が実現!
9月27日、東京品川のソニー・コンピュータエンタテインメント(以下、SCE)本社にて、現在同社が発売を予定しているタイトル「ICO」と「ワンダと巨像」各HDリマスター版の発売を記念して、ユーザーを招いてのプレミアムイベントを開催した。
「ICO」と「ワンダと巨像」(以下、ワンダ)は、ともにPS2で発売されたアクションアドベンチャーゲーム。大勢の敵をぶっ飛ばすアクションや、深く作りこまれたシステムは、この2作には搭載されていない。しかし、シンプルなゲーム性の中で、キャラクターの挙動やカメラワークといった部分が、圧倒的に作りこまれている。
それだけなら、同じコンセプトの他作品はいくらでもある。この2作のユニークだった部分は、それらがムービーの力に頼ったものではなく、あくまでもプレイアブルな部分での作り込みだからだ。初めてこれらの作品をプレイした時の「な、なんだこれは!」という不思議な感覚が忘れられない人も多いことだろう。
本イベントでは、その「ICO」と「ワンダ」のゲームデザインとディレクションを務めた、SCEのディレクターである上田文人氏。そして同じくSCEより、「サイレントヒル」や「SIREN」のディレクターを務め、今回のHDリマスター版では上田氏とともにディレクターとなった外山圭一郎氏によるトークセッションが行われた。
互いに認め合うクリエイターである両氏だけに、ディ〜プ情報がガンガン飛び交っていた。「ICO」ファン、および「ワンダ」ファンは、ぜひ期待してご覧いただきたい。
過去・今・これからの「ICO」と「トリコ」を、ディレクターが語る!
イベントは、最初から最後まで上田氏と外山氏による濃密なトークが途切れなく交わされていた。もれなくそれらの内容をお伝えするため、会話のテーマごと分けてのインタビュー形式でお伝えする。
テーマ1「ICO」について
―― 上田さんにとっての「ICO」と、リマスターで見てほしいポイントは?
上田氏 まずICOについてですね。これは僕が初めてゲームデザインとディレクションを担当した作品で、当時は右も左も分からない状況で制作していたのを覚えています。今回発売されるHDリマスター版では、解像度が上がったり、3D対応などもしています。ですが、できればそれよりも、当時の「作っていた頃の志」が消えておらず、今でも評価できるものになっている、という点を確認していただきたいと思っています。
―― リマスター版における変化があるのか?
上田氏 基本的には、オリジナル版に忠実なアップコンバートをした作品になります。
―― 「ICO」という作品の“一貫性”について。
外山氏 オリジナルというと、ICOはもともと初代のPSで制作していましたよね。長く開発を続けていたのに、コンセプトも雰囲気も一切変化が無いというのは、すごいことですよ。
上田氏 (ICOを制作した)当初は、ゲームのディレクションやデザインをしたことがありませんでした。そういう僕が、どうやったら外山さんを始めとする「経験者」を超えられるのか、というのはとにかく考えましたね。まずは、とにかく他の人と逆のことをやってみよう、と。それを貫いた結果です。
外山氏 少なくとも日本のゲームで、同じようなタイトル、というのは見たことがないですよ。
―― 「ICO」をはじめて見た印象は?
上田氏 外山さんとは、最近はお酒を飲みに行ったりしているのですが、そこでよく言われるんですんよね。僕の作るゲームは海外向けだって。
外山氏 僕がゲームデザインを担当してゲームが発売されたので、各情報誌をチェックしていたのですが、そこで初めてICOを見たんです。当初は、面白そうだけど海外作品かな? くらいに思っていたのですが、実は同じビルの中で作っていた作品だったのですね(笑)
―― 「ICO」に使われた技術は?
外山氏 考えられたカメラワークというのも特徴でした。当時は、引きの視点で全体像を映し、アクションの邪魔にならないようにするというのが主流でした。その中で、あれだけカメラワークにこだわった作品はあまりありませんでしたね。
上田氏 雰囲気を優先させすぎて、少しアクションに制限が出てしまった、という声も当然聞こえました。ですが、あえてそのままリリースしています。その決断は、今でも間違ってはいないと思っています。
テーマ2「ワンダと巨像」について
―― 「ワンダ」の製作をはじめた経緯は?
上田氏 ICOの次に製作を開始したのですが、(製作を始めた)その理由の元には、やはりICOがあります。狭い世界で、無数にあるギミックの細かな整合性を取る作業を4年間もやっていたわけですから、次は広い世界でアクション活劇をしたい! と思い立ったのがきっかけですね。
―― 「ワンダ」製作時の印象は?
外山氏 僕が「SIREN2」を出していた頃です。製作中のワンダを触らせてもらったのですが、面白い体験でした。ボス戦がすげぇんだ、っていうかボスしかできてないけど大丈夫なのかな? みたいなことを言っていたら、ボスしかいないゲームだったという(笑)
―― 「ワンダ」という作品がもたらした影響は?
上田氏 本来(他のゲームなら)、フィールドに色々な敵を配置して退屈させないようにするところなのですが、それらをすべて排除しました。それが良い方向に影響が出たのは、良かったと思っています。
外山氏 後にも先にも、ワンダと呼べる作品はワンダだけですよね。それと、他のゲームに与えた影響もかなり大きかったです。
上田氏 非常に光栄なことです。ですが、最終目標はこのワンダのような戦い方(敵にしがみついての戦い)を主流にすることです。そういう意味では、まだ目標には達していません。そこでさらなるひと押しが、今作っている「人喰い大鷲のトリコ」になります。
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