商品がマネされるぐらいでないと――タニタの活動量計「カロリズム」:売れるのには理由がある(1/2 ページ)
「口から入るカロリーのことをすごく気にするのに、消費したカロリーを気にしないのはおかしいのでは?」 そんな疑問から新カテゴリー製品、活動量計「カロリズム」が誕生した。
ダイエットをポジティブに支援する、新定番製品
体組成計「インナースキャン50」シリーズが好評のタニタだが、2009年に発売した活動量計「カロリズム(AM-120)」も年間目標販売数3万台を予定していたところを3カ月で達成し、2011年5月に「カロリズム」シリーズ全体の累計出荷台数が16万台を突破するなどメーカー想定以上の売れ行きで、新たな定番製品となっている。
とはいえ活動量計「カロリズム」という製品は、体重計や体脂肪計に比べるとまだまだどんな製品か認知されているとはいえない。分かりやすくいうと消費カロリーを測定する製品となるが、具体的にはどのように使用するものなのだろうか。
まず初期設定で、生年月日や性別、身長、体重、体脂肪率などを入力することで、座って安静にした状態で1日過ごした際の消費カロリーである安静時代謝量を確認する。
設定されたカロリズムを胸のあたりに固定すると、iPhoneやWiiのコントローラにも使われている加速度センサーによって、その人の「行動」を判別し、行動に即して費したカロリーを記録していく。
安静時代謝量に、行動によって生じた消費カロリーを加えることで、1日の総消費カロリーが把握できるという仕組みだ。
今までのダイエットがとかく、「食べるのを我慢しなくてはダメ」というネガティブなイメージだったものを、「ここまでならば食べてもOK!」であるとか、食べても「これだけ運動すればOK!」というように明確な数値を見てポジティブに取り組める製品であることが、いちばんユーザーに支持されているところだと、ヘルスケア事業部 商品・販売企画課 加藤純(かとうじゅん)氏は分析している。
綿密な基礎研究が土台の根拠ある製品開発
実際、筆者も「カロリズム DIET」を10日間程度試用したのだが、胸に固定しておく以外に特にいつもの日常生活と変わらないので、何かに「取り組む」というより、「気楽に楽しめる」製品だった。
しかし、気軽に楽しめる製品だといっても、そこは生粋の「はかり」メーカーを自認し、製品の計測精度には並々ならぬこだわりを持っているタニタのこと、開発には4年の歳月をかけている。
まず基礎研究として、口にマスクを着け消費される酸素量から消費カロリーを調べる装置で、家事やデスクワークなどの行動と消費カロリーの関連性を調査した。次に相関関係を認めたデータでヒューマンカロリーメーターを使用し、筑波大学と共同でより高精度な調査をした。
ヒューマンカロリーメーターという語感からは実験器具のようなイメージを受けるが、実は被験者が中に入って1日過ごす、日本に5台しかない大がかりな実験室だ。その部屋は、空気の出入口が1つになっており消費された酸素量が分かるようになっている。
被験者はヒューマンカロリーメーターの中で、食事や家事、デスクワークやトレッドミルによる歩行運動など、一般的な日常生活を24時間再現する。
日常生活を行うだけとはいえ、睡眠時間も含め各行動を予定時間に合わせることが求められるので、被験者が楽をできる実験ではないということだが、その綿密なデータが体組成計開発などで蓄積された豊富なデータとともに高精度なカロリズムの計測に貢献している。
活動量計という製品に明確な定義付がないため、製品によっては年齢に応じた基礎代謝量と歩数のみから総消費カロリーを導き出しているだけのものも存在するという。
はかりメーカーからしてみれば「それでは、ちゃんと測ったことにならないではないか」と思わないでもないというが、購入前に活動量計という製品がどんなものなのかちゃんと情報収集するユーザーには、カロリズムが選ばれているという。
初期設定で活動レベル“Level 1”(事務など座っての生活中心の方)を選択したおかげか、1日ほぼ座りっぱなしで原稿を書いていた日でも、屋内を移動した動きが見られる。何も表れない一直線のグラフになるかと思っていたのでうれしくもあり、運動しなければなとも思える。グラフの強弱は、開発段階で加藤氏が6個のカロリズムを一度に着けるなどして日常生活テストを繰り返し、絶妙なさじ加減に調整してある。
昼には買い物に、夜には外食に行った日。数日前のことだったので外食のことはすっかり忘れていたが、グラフにちゃんと反映されていてた。自分の生活、行動を思い出すことができるという効果もあった。
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