見えないものの見える化、シャープの「プラズマクラスター空気清浄機」売れるのには理由がある(2/2 ページ)

» 2011年11月08日 10時36分 公開
[種子島健吉,ITmedia]
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航空力学の応用、空気の流れが最重要

 空気の循環、空気の流れについて触れたが、空気清浄機で最重要なのはこの空気の流れに他ならない。

 強力な集じんフィルター、脱臭フィルターを搭載していたとしても、部屋の隅々の空気を吸い込み、循環させることができなければフィルターが効果を発揮することはない。せっかくの空気清浄機もただの箱だ。

 そこでシャープでは航空力学に造詣のある気流制御の専門家が空気清浄機の開発に携わり、独自循環気流で集じんスピートのアップをしているという。

画像 プラズマクラスター25000搭載の加湿空気清浄機では、風量アップと独自循環気流で、これまでの同社機種(プラズマクラスター7000搭載の機種)より集じんスピードが約20%アップしているという。新製品発表会でも透明な仕切りの中、密閉に近い空間でのドライアイスを使用したデモンストレーションがあったが、循環する空気の流れを実際に見ることができた

最後の決め手は口コミだった

 シャープの空気清浄機事業は1987年に開始された。そして、2000年に初めてプラズマクラスターが空気清浄機FU-L40Xに搭載された。以来、10年以上の歴史を持つシャープのプラズマクラスター空気清浄機だが、「アカデミックマーケティング」でより効果的な商品の開発を進め、効果のほどを示しただけで順調に販売が推移したのかといえば、そうではなかったという。

 そこで重要な役割を果たしたものがあった。最初に「見えないから分かりくい」「使わないと分からない」製品と書いたが、逆に言えば「使えば分かる」のである。

 仮に、Twitterで「しばらくつけっぱなしにしていたら、部屋のしつこいタバコのニオイが消えちゃってビックリ!」と誰かがツイートしたらどう思うだろう?

 ある意味、販売店でオススメされたときよりも、CMを見たときよりも良い印象が残らないだろうか? つまり、ここで注目したいのは使った人の情報、口コミの重要性だ。

 昨今はTwitterや掲示板などインターネット上の口コミということになるだろうが、同じようなことはインターネットが今ほど普及していなかった昔からあったという。

 近所の人が良いと言っていた、親戚が使っていて良いと言っていたということも口コミの一形態だが、家電販売店が口コミを広げてくれるケースも多かったそうだ。

 販売員がプラズマクラスター空気清浄機を購入し使ってみて、良かったと顧客に勧める。購入し使ってみた顧客が店舗に立ち寄って、効果のほどを販売員に話す。販売員がその話を別の顧客に伝えたり、店内に掲示するというあんばいだ。

 製品の効果を明らかにするための第三者機関のデータがある。しかし、最終的に決め手となったのが、実際に使用した顧客の口コミだったというのは興味深い事実だ。

 ちなみにインタビューに同席した広報担当者に、前述のような口コミの拡散に関して社として「何か仕掛けたことや、仕掛ける予定があるか?」と質問したところ、今までしたこともないし、今のところ広報宣伝に組み込む予定も特にないということだった。

 企業によってはネット対策室のようなものを作り、掲示板などを巡回して対策しているとの噂も聞く。だがシャープとしては、あくまでも製品の性能や効果が最初にあり、その結実としての口コミという認識で、これからも機能や使い勝手を高めていけば結果は自ずとついてくるというのが今のところの考えのようだ。

画像 プラズマクラスター搭載製品、第1弾の空気清浄機FU-L40X。まだ現行機種ほどすっきりとしたデザインではないし、プラズマクラスターのロゴも見えない

使い勝手のさらなる向上

 製品の性能が良ければそれで良いのかといえばそれだけでは良くないのが、家庭で日常的に使用される家電の難しいところだろう。そう、使い勝手の問題だ。

 使い勝手を向上させるためには、当然、社内の老若男女に試用してもらう。さらに、パネルなどの使い勝手についての意見がほしければあまり空気清浄機を試用したことがない人に、以前の製品からの改良点を実感できるかどうかが知りたければ、シャープの空気清浄機を使用している人に試用を依頼するなどする。その中でメンテナンスのしにくさや、不便な面を指摘されることがあれば応えていく。

画像 フィルターは、掃除機で後部パネル掃除するだけ。我が家の旧式の空気清浄機は、筐体を開いてフィルターを引き出さないと清掃ができない。すべての空気清浄機はそういうものだと思っていたが、空気清浄機は進化していた

 最新機種では一部の機種を除いてフィルターは10年間交換不要になり、集まったホコリに関してはフィルターを引き出したりすることなく、掃除機で空気清浄機後部パネルを掃除するだけで良くなった(加湿フィルターや洗える脱臭フィルターは、定期的な手入れが必要である)。

 加えて、ハンドル付き給水タンクは自立するようになり、力がない女性でも楽に給水できるようになり、吸水口が広く手が入るので日々のメンテナンスもしやすくなった。

 また、本来のプラズマクラスター空気清浄機の推奨される使用方法は、常時電源を入れておくというものだが、電気代を気にして外出時には切ってしまう事例があった。

 そのことなどから、24時間あたりの電気代の目安をデジタル表示できる「電気代モニター」も搭載した。

 電気使用量ではなく、24時間の電気代の目安を円で表示してくれるのが好評だそうで、電気代(24時間)の目安は、KI-AX70が加湿空気清浄(強)運転した際に約23円という、電源を入れておいたままにしても気にならない程度だ。

 シャープのプラズマクラスター搭載空気清浄機事業は11年目ということで、製品も熟成の感がある。しかし、それに安穏とせず、製品本来の機能、そして使い勝手を新製品ごとに改良、向上させていくという姿勢が、口コミで良いエピソードが拡散していく秘訣なのではないだろうか。

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