第16回:ゲームは見た目がすべて!? ひと目でプレイヤーを虜にするデモ画面の工夫なぜ、人はゲームにハマルのか?(4/6 ページ)

» 2012年02月10日 17時45分 公開
[鴫原盛之,ITmedia]

今や忘れ去られた演出、「コーヒーブレイク」の持つ意味を振り返る

 ここからは1980年代初頭に発売されたゲームによく登場した、30代以上の方には懐かしい「コーヒーブレイク」と呼ばれるデモ画面の例を見ていくことにしましょう。

 今ではすっかり死語と化した「コーヒーブレイク」ですが、これはプレイヤーが実際に遊んでいる最中にときどき登場するデモ画面の総称です。その意図するところは、プレイヤーの目を楽しませるのと同時に休息の時間を与え、文字通りお茶を飲んだりタバコを一服したりしてリラックスさせるための気遣い、すなわちサービスをすることにあります。

 「コーヒーブレイク」の元祖は、先ほども紹介した往年の名作である「パックマン」。本作では2面および6面、それ以降は4面クリアするごとにデモ画面が登場し、同時にここでしか聞けないBGMが流れてプレイヤーを大いになごませてくれます。またデモ画面のパターンは全部で3種類ありますので、これらの演出を自力で何種類見られたかどうかが、当時のプレイヤーの実力を示す一種のバロメーターになっていた点も見逃せないポイントです。

 ちなみに、本作を開発した岩谷徹氏は著書「パックマンのゲーム学入門」(エンターブレイン刊)において、「追いかけっこをベースにしたゲーム性は長い緊張感が続き(中略)……そこで、ゲームプレイの緊張感をほぐす役割と、キャラクターの世界観を広げる意味を込め、ステージの合間にデモアニメーションの挿入を提案したのです。」と述べています。とても面白い本ですので、興味のある方はぜひご一読されることをオススメします。

※PS版「ナムコミュージアムvol.1」を使用。
(C)1995 NAMCO LTD., ALL RIGHTS RESERVED.

 当時の大ヒット作が取り入れたアイデアということもあり、以後「コーヒーブレイク」の演出が登場する作品が相次いで現れるようになりました。以下の動画は先ほども紹介した「Mr.Do!」、およびタイトーが1983年に発売したアクションゲーム「ちゃっくんぽっぷ」の「コーヒーブレイク」の様子です。いずれも3面クリアごとにデモが挿入され、「ちゃっくんぽっぷ」については「パックマン」と同様に複数のパターンが存在します。

 余談になりますが、任天堂が1983年に発売したファミリーコンピュータ用ソフトの「麻雀」では、ゲーム中にポーズをかけるとティーカップの絵と「TEA TIME」というメッセージが表示されます。これもおそらく、「コーヒーブレイク」にインスパイアされた演出なのではないかと思われます。

※PS2版「タイトーメモリーズ下巻」を使用
(C)TAITO CORP. 1978-2005

※Wiiバーチャルコンソール版を使用。
(C)UNIVERSAL ENTERTAINMENT


 やがて時代が進むとともに、「コーヒーブレイク」という言葉を耳にする機会はほとんどなくなりましたが、プレイ中のデモ画面のバリエーションはさらに豊かになっていきました。その理由は、コンピュータの描画性能が向上して見た目にも美しいアニメーションが描けるようになったことと、ただ敵を倒す以外にもゲーム内にいろいろなストーリーを盛り込んだタイトルが増えたことの2点に集約されるのではないかと推測されます。

 例えば、前回もご紹介したナムコが1984年に発売したアクションゲーム「ドラゴンバスター」では、3ラウンドをクリアするごとにお姫様が登場するデモが挿入され、特定のアイテムを持っていれば姫の救出のシーンが、持っていないときは再び敵のドラゴンがさらっていく場面のデモが流れます。つまり、プレイヤーに「コーヒーブレイク」の時間を与えるのと同時にゲームのストーリー展開も説明しているわけです。

 このようなデモの導入は1990年代以降の作品でも数多く見られます。以下のムービーはセイブ開発が1993年に発売したシューティングゲーム、「雷電II」で5面をクリアしたときに流れるデモ画面です。本作では5面のボスを倒すとゲーム開始時に登場した母艦にいったん帰還し、再度飛び出すと今度は地上から敵の親玉が待ち受ける宇宙空間へと舞台が移るというとても長いムービーが流れます。画面とBGMの美しさ(※デモ中の曲は1面のテーマと同じです)もさることながら、かなりハードな内容のゲームなのでプレイヤーとしてはたいへん貴重な休息時間としても重宝します。

 さらに追記しますと、「雷電II」と同様に宇宙へ飛び立つデモ画面の演出は1981年にテーカン(現:コーエーテクモゲームス)が発売した「プレアデス」や、ジャレコが1984年に発売した「フォーメーションZ」などでも見ることができます。

※プレイステーション版「雷電プロジェクト」を使用。
(C)1995 SEIBU KAIHATSU. INC.


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