第16回:ゲームは見た目がすべて!? ひと目でプレイヤーを虜にするデモ画面の工夫:なぜ、人はゲームにハマルのか?(5/6 ページ)
また、手元に現物がないので映像を用意することがきなかったのですが、アイレムが1984〜87年にかけて発売したアクションパズルゲームの「ロードランナー」シリーズでは、次のステージから新しい敵の種類が登場し、舞台が変わるときにデモ画面が挿入されるようになっていたと記憶しています。筆者は初めてこのデモを見たときには、「ウワッ、何だか強そうな格好をした敵が出てきた。次の面からすごく難しくなるのかなあ……」などという恐怖感や、同時に未知の世界に進めるワクワク感もあってとても感動したのが今でも忘れられません。
アーケードゲームにおいて随分前から絶滅した感のある「コーヒーブレイク」ですが、その原因はおそらく収益性に問題が生じるからでしょう。デモ画面の最中はプレイヤーがミスをする要素が一切ない、つまり追加料金が取れない状態になりますから、あまり導入し過ぎると時間効率が悪くなりお店側がもうからなくなってしまうからです。これは筆者の推測になりますが、各ステージをクリアするごとに得点計算などのリザルト画面を表示する作品が多くなるにつれて、その分「コーヒーブレイク」の演出を割愛せざるを得なくなったという事情もあったのではないでしょうか。このあたりも今後の研究課題となりそうですね。
家庭用ゲームにおけるデモ画面の工夫
ここからは、家庭用ゲームにおけるデモ画面の面白い使用例を見ていくことにしましょう。家庭用のパッケージソフトの場合は、アーケードゲームと違って一度ソフトを購入すれば追加料金を払う必要は一切ありません。ですが、プレイヤーにゲームの内容を理解してもらうためのデモを用意する例は昔から非常に多く存在します。これはアーケードからの移植作品に限らず、家庭用オリジナルのタイトルでも同様です。
以下の写真は、1995年にクエストが発売したスーパーファミコン用のシミュレーションRPGである「タクティクスオウガ」。本作にはたくさんの種類のユニットが登場しますが、その特徴をアニメーションを交えながら非常に分かりやすく説明したデモ画面を用意して、プレイヤーが少しでも覚えやすくなるよう配慮しています。また文章での解説は一切出てこないのですが、実は各ユニットが手にしている武器はそれぞれが最も得意とする物を持っているので、ちょっとした攻略のヒントにもなっています。
本作はゲームの解説を交えたデモを取り入れた典型例ですが、近年はソフトを起動直後のデモ画面でストーリー(プロローグ)を説明するためのオープニングムービーを流してから、タイトル画面へと移行するタイトル目立つ印象です。その代わりに、ゲーム内容や操作方法などの説明はスタートボタンを押した後に登場するチュートリアル機能を使ってプレイヤーを手助けするケースが多いようです。なお、チュートリアルについては当コラムの第14回でも取り上げておりますので、興味のある方はぜひこちらもご一読ください。
家庭用ソフトではセーブデータを呼び出したり新しいステージに進んだときなど、いわゆるロード時間が発生するのは日常茶飯事。ロード中には「しばらくお待ちください」とか「NOW LOADING」などと画面に表示され、プレイヤーからしばし時間を頂戴することになります。
ロード時間がほんの数秒程度で終われば特に気にはなりませんが、予想以上に長時間待たされたせいで「遅いなあ……」「早くしろよ!」などと思わず声に出してしまった経験が皆さんもきっとあるのではないでしょうか? また、もしロード中に画面が真っ暗なまま何も表示されなかった場合、「アレ、故障かな?」などとプレイヤーが勘違いしてしまうことにもなりかねません。
そこで家庭用ゲームにおいては、ロード中の間(ま)をつなぐ目的でもデモ画面が活用されることになります。
例えば、1997年にスクウェア(現:スクウェア・エニックス)が発売したプレイステーション版の「ファイナルファンタジーIV」。本作は元々スーパーファミコン用のROMカセットで発売されたものですが、PS版はCD-ROMになった関係でセーブデータのロード時間が以前よりも長くなってしまいました。
そこで、PS版ではロード中にちょっとした時間つぶしができるように、ゲームのキャラクターたちが登場するアニメーションを見せることでプレイヤーの目を楽しませるようにしています。また、デモ画面には非常に多くのパターンがあり、どれが出るかは毎回ランダムで変わるのもプレイヤーにとってはちょっとしたお楽しみにもなっているのです。
当コラムでたびたび紹介しているプレイステーション用ソフト「ナムコミュージアム」の各シリーズでも、タイトル画面でゲームを選択後のロード時間中にキャラクターのアニメーションが表示されます。このキャラクターは、ロードが完了するまで画面内の左右を往復する動きをずっと繰り返しますが、実はボタンを連打するとスピードがどんどん速くなるようになっています。つまり、これに気づいたプレイヤーが面白がってボタンを夢中で叩きまくっていると、いつの間にかデータの読み込みが完了してお目当てのゲームがすぐに始められるという、なんともナイスな仕掛けなのです。
以下のムービーは、「ナムコミュージアムVOL.1」で「ギャラガ」を起動したときのものです。だんだん速くなるキャラクターを目で一生懸命追いかけていると、ロード時間が実際よりもかなり短く感じられるようになるのがきっとお分かりいただけるかと思います。
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