「フランス流クール・ジャパン」イベントで見えた、フランス人がオタクな理由(わけ)日々是遊戯

なぜフランス人はオタク・コンテンツが好きなのか。フランスのゲーム・アニメ会社「Ankama」が、日本とフランスの文化について語った。

» 2012年02月14日 09時01分 公開
[池谷勇人,ITmedia]

フランス人に会ったら「グレンダイザー」って知ってる? と聞いてみましょう

 フランスと言えば、毎年パリ郊外で「ジャパン・エキスポ」が開催されるなど、世界でも指折りの「オタク国」として有名。ちなみに世界における「マンガ」の消費量は、日本に次いでフランスが堂々の世界第2位なのだそうだ。

 そんなフランスのオタク事情が垣間見えるイベント「惑星ANKAMAへようこそ:フランス流『クール・ジャパン』の世界」が2月11日、飯田橋にある東京日仏学院にて開催された。主催は以前「アイテム課金はゲームバランスを著しく崩す? 『脱・アイテム課金』に向け動き出した、あるオンラインゲームの取り組み」という記事で紹介したAnkama Japan。イベントは2部構成で、第一部ではAnkamaがフランスで放送しているアニメ作品の上映会、第二部ではアニメの監督を務めた高橋敦史さんをゲストに迎えた討論会が行われた。

 筆者は第一部の後半から参加したのだが、いきなり驚いたのが、上映されていた「伝説のオグレスト」というアニメがものすごく「日本チック」だったこと。さすがにキャラクター造形は好みが分かれそうだが、作画や演出などはいわゆる「アメリカン」なものではなく、「ちょっと前の東映アニメ作品」といった印象。フランス語でさえなかったら、そのまま日本のアニメだと言っても十分に通用すると思う。

 もっとも、第二部がはじまってすぐに分かったのだが、そもそもこのアニメはフランスのAnkamaが日本のアニメスタジオに発注して制作したものだった。それで監督を務めたのが、ゲストとして登壇した高橋さんだったというわけだ。

画像画像画像 高橋敦史さんが監督を務めた、日仏共同制作アニメ「伝説のオグレスト」。MMORPG「ドフス」に登場するキャラクター「オグレスト」の幼少期を描いたアニメ作品

 なぜフランスではこうした日本的アニメがウケるのだろうか。そもそも60〜80年代ごろのフランスでは「聖闘士星矢」や「ドラゴンボール」、「グレンダイザー」といった日本のアニメが当たり前のように放送されており、当時それらを見て育った層が今のオタク産業人気を支えているのだそう(余談だが「グレンダイザー」はフランスでは「ゴルドラック」の名前で人気を博し、ピーク時には最高視聴率70%を越えたこともあったとか)。Ankama創設者の3人も、そうした日本のアニメやゲームへの憧れが根底にあり、そこからAnkamaを設立するに至ったそうだ。ただ、あまりに日本アニメが増えすぎてしまったため一部で「暴力的だ」などと問題視されるようになり、90年代以降、フランスでの日本アニメの放送本数は減少傾向にあるという。

 高橋監督によると、実際にAnkamaの人たちと仕事をしてみて、文化的ギャップの少なさにあらためて驚いたそう。また日本のアニメはすでにピークを過ぎてしまって活気を失っているが、フランスはその点、産業がまだ若く、元気があるという。

「子供の頃に日本のアニメを見て育っているから、文化的に共通言語ができあがっている。日本のアニメもかつては西洋の真似だったが、それをまた西洋で真似されていて、しかも完全に同じというわけではなく、若さもあって面白い歪み方をしてる。合わせ鏡のような関係」(高橋監督)

画像

 また日本では現在、アニメは「DVDを売るためのモノ」になってしまったが、Ankamaの場合はゲームで生んだ利益を、ファンサービスの一環としてアニメに還元するという考えで、監督としては自由にやれて楽しかったとも。「伝説のオグレスト」は、「どうぶつ宝島」や「長靴をはいた猫」のような、「かつて自分が見て楽しかったアニメの体験を再現しようと思いながら作った」そうだ。

 さらに話題はゲーム産業にも及んだ。Ankamaの人たちもかつては、スーパーファミコンや「ファイナルファンタジー」などの影響を受けてゲーム開発を志したが、今のゲーム市場は「プレイヤーにはいい時代になったが、作り手にとっては厳しくなってきている」と分析。またしばしば問題にされる開発費の高騰については、「例えば『テトリス』のようなゲームはまったくお金がかかっていない。ディテールを細かくすれば売れるというのは『保険』にすぎない」と厳しい指摘も。また高橋監督も、過剰なムービーシーンについては「かつて抱いていた映画やアニメへのあこがれを発散しているのでは」と分析した。このあたりは日本のゲーム関係者からすると異論もあるのだろうが、それも日仏の視点の違いとして興味深く受け止めておきたい。

画像画像画像 会場に展示されていた「ドフス」のワートワーク。イラストのタッチやキャラクター造形にも、日本のアニメ作品の影響が強く見られる

 軍事力や経済力によって他国に干渉することを「ハード・パワー」と呼ぶのに対し、文化や価値観、魅力などを通じて他国を動かすことを「ソフト・パワー」と呼ぶそうだ。Ankamaの人たちの話を聞いていると、今のフランスの現状がまさに、日本の「ソフト・パワー」によって形成されてきたものだということがよくわかる。今後も日本文化のよき理解者として、フランスとの関係を大切にしていきたいものだ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2404/25/news016.jpg 「電車の中で見ちゃダメ」「笑ったww」 実家からLINE「子ヤギがすばしっこくて捕まらない」→送られてきた衝撃姿が320万表示!
  2. /nl/articles/2404/23/news090.jpg 誰も教えてくれなかった“裁縫の裏ワザ”が目からウロコ 200万再生のライフハックに「画期的」と称賛【海外】
  3. /nl/articles/2404/21/news011.jpg 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  4. /nl/articles/2404/25/news043.jpg 娘の給食の献立表を見たら…… 正体不明の“謎の料理名”が「これはわからんw」と話題に その意外な正体に納得!
  5. /nl/articles/2404/25/news129.jpg プロ野球チップスでまた“不良品”流出 伊藤大海「176m」表記に続き…… カルビー謝罪「深くお詫び」
  6. /nl/articles/2404/24/news018.jpg 1年半ケージに引きこもっていたシャーシャー猫が、ある夜布団に入ってきて…… 感涙の行動に「まるで別猫」「こんな日が来るなんて」
  7. /nl/articles/2404/24/news017.jpg メルカリで300円の紙モノセットを買ってみたら…… 出品者のあたたかな心遣いに「利益は考えていないんでしょうね」「見ててわくわくします」
  8. /nl/articles/2404/23/news185.jpg 子どもに高級キーボードのパーツを捨てられた → 公式の“先読みしすぎた対応”が話題「そういうこともあろうかと」
  9. /nl/articles/2401/18/news015.jpg 巨大深海魚のぶっとい毒針に刺され5時間後、体がとんでもないことに…… 衝撃の経過報告に「死なないで」
  10. /nl/articles/2404/22/news124.jpg ダイソー「マルチ万能ほうき」が家事ラクの救世主 名前負け知らずの便利さに「これやばっ!!」「220円に驚き」の声
先週の総合アクセスTOP10
  1. 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  2. 富山県警のX投稿に登場の女性白バイ隊員に過去一注目集まる「可愛い過ぎて、取締り情報が入ってこない」
  3. 2カ月赤ちゃん、おばあちゃんに少々強引な寝かしつけをされると…… コントのようなオチに「爆笑!」「可愛すぎて無事昇天」
  4. 異世界転生したローソン出現 ラスボスに挑む前のショップみたいで「合成かと思った」「日本にあるんだ」
  5. 【今日の計算】「8+9÷3−5」を計算せよ
  6. 21歳の無名アイドル、ビジュアル拡散で「あの頃の橋本環奈すぎる」とSNS騒然 「実物の方が可愛い」「見つかっちゃったなー」の声も
  7. 1歳赤ちゃん、寝る時間に現れないと思ったら…… 思わぬお仲間連れとご紹介が「めっちゃくちゃ可愛い」と220万再生
  8. 業務スーパーで買ったアサリに豆乳を与えて育てたら…… 数日後の摩訶不思議な変化に「面白い」「ちゃんと豆乳を食べてた?」
  9. 祖母から継いだ築80年の古家で「謎の箱」を発見→開けてみると…… 驚きの中身に「うわー!スゴッ」「かなり高価だと思いますよ!」
  10. 「ゆるキャン△」のイメージビジュアルそのまま? 工事の看板イラストが登場キャラにしか見えない 工事担当者「狙いました」
先月の総合アクセスTOP10
  1. フワちゃん、弟の結婚式で卑劣な行為に「席次見て名前覚えたからな」 めでたい場でのひんしゅく行為に「プライベート守ろうよ!」の声
  2. 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
  3. 水道検針員から直筆の手紙、驚き確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生「これはびっくり」「生命の逞しさ」
  4. フワちゃん、収録中に見えてはいけない“部位”が映る まさかの露出に「拡大しちゃったじゃん」「またか」の声
  5. スーパーで売れ残っていた半額のカニを水槽に入れてみたら…… 220万再生された涙の結末に「切なくなった」「凄く感動」
  6. 桐朋高等学校、78期卒業生の答辞に賛辞やまず 「只者ではない」「感動のあまり泣いて10回読み直した」
  7. 「これは悲劇」 ヤマザキ“春のパンまつり”シールを集めていたはずなのに…… 途中で気づいたまさかの現実
  8. 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
  9. がん闘病中の見栄晴、20回以上の放射線治療を受け変化が…… 「痛がゆくなって来ました」
  10. 食べ終わったパイナップルの葉を土に植えたら…… 3年半後、目を疑う結果に「もう、ただただ感動です」「ちょっと泣きそう」