女子中高生に絶大なる支持を得る、フリューのプリントシール機売れるのには理由がある

いまやショッピングモールのゲームコーナー、アミューズメントスポットに欠かせない存在なのが、プリントシール機。その分野で新たな製品を開発し続け、女子中高生に絶大なる支持を得ているのがフリューだ。

» 2012年07月25日 14時01分 公開
[種子島健吉,ITmedia]
※本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

プリントシール機で女子中高生のハートを射止める

 女子中高生がアミューズメントスポットやショッピングモールのゲームコーナーに向かうとき、お目当てはゲームではなく、プリントシール機なのだそうだ。プリントシール機という言い方には馴染みがない方は、いわゆる「プリクラ」といったほうが分かりやすいかもしれない。しかし、厳密にいうと「プリント倶楽部」はアトラス(現在はインデックスに吸収合併され、「『アトラス』ブランド」になっている)の製品名なので、ここではプリントシール機としておこう。

 そのプリントシール機コーナーに、必ずといって良いほど設置されているのがフリューの製品だ。家電製品のように名指しして買うものではないので、メーカーを意識していない女子中高生は多いかもしれないが、彼女たちも「Heroine Face」「LADY BY TOKYO」という製品名には心当たりがあるのではないだろうか。

 それもそのはず、同社のプリントシール機はアミューズメントゲーム業界誌、アミューズメント・ジャーナルの年間大賞を4年連続で受賞しているほど、ユーザーの高い支持を得ているのだ。また、2011年に年間大賞を受賞した「BF manual」は、同誌の月間ランキングで8カ月連続1位を獲得している。

 「売れるのには理由がある」では、今まで主に家電製品のことを取り上げてきたが、今回はアミューズメント施設向け機器、それも女子中高生中心というピンポイントなマーケティング製品ということで、また違った興味深いエピソードがあるのではないだろうか。それではまず、おおまかなフリューのプリントシール機の歴史をひもといてみよう。

フリューのプリントシール機の歴史

1997年 撮った画像が似顔絵シールになる似顔絵シール機「似テランジェロ」を発売し、プリントシール機事業に参入した。

2000年 「フラッシュショット」を発売。ストロボ(フラッシュ)装備による画質の向上、撮影した画像に対しての落書き(スタンプ、ペン)機能が向上した。この頃、プリントシールが女子中高生の遊びとして定着した。

2004年 通信機能を搭載し、携帯電話連携を実現した「天真爛漫」を発売。これにより、携帯電話への画像送信サービスが定番に。

画像 「天真爛漫」の筐体

2006年 「姫と小悪魔」を発売。この機種には一眼レフデジタルカメラを搭載しており、写りが大きく向上した。背景色をお姫様をイメージした「パステル」と、小悪魔をイメージした「ビビッド」という2つから選択できる機能の搭載も初だった。

2007年 「美人-プレミアム-」を発売。高性能プリンターを搭載し、高画質なシールが出力可能になった。業界で初めて「目」を強調する機能を採用し女子高生から大きな支持を得た。雑誌などで、つけまつげなど目元にポイントを置いたメイクの特集などが多かった時期での発売だったため、目ヂカラブームの一翼を担った。以後、目を強調する画像処理はプリントシール機のスタンダードとなる。

画像 「美人-プレミアム-」筐体

2009年 「Lumi」を発売。それまで顔を撮影することがメインだったが、足のつま先まで写る全身撮影が可能となった。思い出と一緒にオシャレ(ファッション)を残すという新提案を行った。

画像 「Lumi」筐体

2009年 「美顔ラボ」を発売。3人分までシールがカットされるマルチカット機能で、使い勝手も向上した。

2011年 「LADY BY TOKYO」を発売。近年、主流だった白い撮影ブースで光を拡散させてキレイに撮る方式から、さらにキレイな写りの実現のための黒色撮影ブースや撮影後に背景を選ぶシステムを採用。ナチュラルなのに「盛れる」プリントシール機の火付け役になった。

画像 「LADY BY TOKYO」筐体


「プリ」用語を整理

 プリントシール機に関する用語は、パソコンやスマートフォン、家電に登場するものとも異なっていて、家族に女子中高生でもいない限り、あまり耳にしないものばかりだ。そこで、まず本編に入る前に「プリ用語」を整理しておきたい。

  • 「プリ」:プリントシール(機)の略。「新しいプリ入ったから撮りに行こうよ!」というように、プリントシール機を意味している場合と、「プリ見せて!」というようにプリントシール機で撮影したシールを意味している場合がある。
  • 「目ヂカラ」:一般的には目の表情や視線が相手に与える印象のことだが、女子中高生のいう「目ヂカラ」は、化粧(アイメイク)やカラーコンタクトなどで目を大きく強調して見せることを指す場合が多い。プリントシール機では、目の大きさが実際よりも大きく見えるように画像処理を施し、「目ヂカラ」をアップさせている。
  • 「目強調」:目の大きさが実際よりも大きく見えるように画像処理すること。顔を的確に認識する技術と程良く目を大きくするという画像処理の加減が難しいところ。初期の機種では、目だけが大きく目立ちすぎてしまうこともあったが、最新のものはより自然な仕上がり。好みに合わせて、数種類から目のサイズが選択できる機能も搭載している。
画像画像 左が「目強調」処理前で、右が「目強調」処理後の画像。「目強調」のほかに美肌、痩身、小顔の処理もされている

  • 「盛る」:女子中高生が「自分を超越したかわいさ」という意味で使用する語句。目や髪など、一部の顔パーツに使われることもあるが、多くは全体を見て「自分でありながらも、実際よりもよりよく写ること」を指している。当初は「ゴージャスに派手に盛る」ことが優先されていたが、最新の機種では「自然に盛る」傾向の味付けになっている。「今日プリ盛れてる」といったときは、「今日のプリ、キレイに撮れてる」という意味だ。
  • 「ピン撮(さつ)」:2人同時に、1人ずつの撮影ができるモード、機能のこと。
  • 「プリ画」:プリントシール機から携帯に送信する画像のこと。最近ではブログやSNSの流行により、プロフィール用の画像としての需要も高まっており、プリ画の画質も向上している。

製品開発はリサーチに始まりリサーチに終わるが……

 プリントシール機で撮影するとき、最近の女子中高生の傾向として機能の豊富さもさることながら、「どれだけキレイに撮れるか」というのが一番の選択条件になるのだという。そのため、フリューの最新機種(2012年7月現在) 「RUMOR(ルモア)」は、「盛る」加工をしつつもナチュラルさが感じられるプリとして好評だった「LADY BY TOKYO」の写りをブラッシュアップし、さらにナチュラルかつ「盛れる」撮り味になるような調整になっている。カメラ位置や画角なども追求し全身撮影なのに「顔が劇的に盛れる」という、今までにない撮影が可能となっているのが特長だ。

 フリューでプリントシール機の開発を担当する業務用ゲーム事業部 開発部 リーダー 高雄行康氏によると、新機種を開発する際のコンセプト、方向性について決定する際には、女子高生へのアンケートや直接のヒアリングによって得られた情報と雑誌やテレビなど女性向けの媒体から得ることができるトレンド情報が重要視されるという。リサーチ対象の選定には、マーケティングの専門業者に対して性別、年齢、趣味などのリクエストを細やかに行い、専門業者はそれに合致するプリントシール機ユーザーを選定する。その後、構築したコンセプトの検証過程でも、女子中高校生を中心としたユーザーの反応は、重要な情報源であり商品性を評価する指標としても活用される。

 ただし、リサーチの結果を重要視し、ユーザーの声は事実として真摯に受け止めるものの、そもそものコンセプトに対する評価や判断が、個別の意見に左右されないように注意することが必要になるという。「時には、ユーザー個々の声を『点』として捉えて、コンセプトがブレないようにすることも重要なんです」と高雄氏は語る。実際に「Lumi」を開発している際、そもそも当時「全身を撮る」という概念がユーザーになかったため、ユーザーの反応は決して肯定的なものではなかった。しかし、実際に製品を発売したところ、全身撮影は後継機種でも定番機能になるほど好評だった。「新機能提案タイプの企画では、ユーザー評価だけを判断基準にしていては難しい場合もあると考えています」と高雄氏は振り返る。

画像 フリュー、プリントシール機開発チームの皆さん。後方は、2012年7月発売の最新機種「RUMOR」。最前列向かって一番右の男性、業務用ゲーム事業部 開発部 リーダー 高雄行康氏にお話をうかがった

リサーチ中に競合他社とダブルブッキングが判明

 女子高生に対するリサーチは手慣れたものの同社だが、以前、その難しさを痛感したこともあるという。「開発中の製品についてヒアリングを行っていたんですが、なんと競合他社のリサーチにも参加していることが分かったんです」と、高雄氏は女子高生にリサーチする際の機密情報管理の難しさを強調する。

 また新機能提案タイプの企画でも、こんなことがあったという。2005年発売の「Funky High」は、撮影アングルを変えるために床構造を上下させたり、撮影中に風が吹き出たりするだけでなく、ゲームもできるなど、機能がてんこ盛りの機種だった。ユーザーからはびっくりしたり、おもしろがったりという反応は引き出せたもののプリントシール機としては致命的なことにリピーターいなかったのだという。「機能を欲張りすぎて、もっとも重要なはずの写りの良さが二の次になってしまいました。だからリピーターがいなくて、市場からこの機種が消えるのも早かったんです」と、高雄氏はそれ以降、同社が写りの良さをまず第一に製品開発をするように努めており、それこそがフリューのプリントシール機開発の秘訣であると教えてくれた。

実際の製品に見る「キレイ」な写りへのこだわり

画像 2012年7月発売予定のフリューの最新型プリントシール機「RUMOR」。メーカー出荷時設定価格、1回400円。筐体デザインは、赤、白、黒という目にとまりやすい配色を基調にして、モダンというテーマでまとめられている

画像画像 筐体内部中央に配置されたデジタルカメラユニットが上下に動き、高さ、角度が通常撮影時(バストアップ)と全身撮影時でそれぞれ最適な位置に調整される。そのため、全身撮影でも表情がアップになり「盛った」ときの効果が分かりやすいうえ、ファッションコーディネートも写せ、背景に無駄な余白もなくなる

画像 通常はフラットな撮影ブースのフロアに、ゆるやかな傾斜がついている。これによリ軽くつま先立ちするような姿勢になり、スタイル良く撮影することができる。初めて撮るとカメラから引き気味で撮りがちだが、心持ち前に出るようにしてアップで撮ったほうが仕上がりが良いそうだ

画像画像 左が現行機種の全身撮影画像で、右が「RUMOR」の全身撮影画像。「RUMOR」の全身撮影画像はバストアップのように表情も判別でき、特別ポーズを取らなくても余白が少ない印象的な構図になっている

画像画像 シールのデザインも「RUMOR」独自のスペシャルデザインを採用している。筐体も含めた統一感のあるデザインは「RUMOR」の世界を演出する大事な要素となっている

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2404/25/news016.jpg 「電車の中で見ちゃダメ」「笑ったww」 実家からLINE「子ヤギがすばしっこくて捕まらない」→送られてきた衝撃姿が320万表示!
  2. /nl/articles/2404/23/news090.jpg 誰も教えてくれなかった“裁縫の裏ワザ”が目からウロコ 200万再生のライフハックに「画期的」と称賛【海外】
  3. /nl/articles/2404/21/news011.jpg 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  4. /nl/articles/2404/25/news043.jpg 娘の給食の献立表を見たら…… 正体不明の“謎の料理名”が「これはわからんw」と話題に その意外な正体に納得!
  5. /nl/articles/2404/25/news129.jpg プロ野球チップスでまた“不良品”流出 伊藤大海「176m」表記に続き…… カルビー謝罪「深くお詫び」
  6. /nl/articles/2404/24/news018.jpg 1年半ケージに引きこもっていたシャーシャー猫が、ある夜布団に入ってきて…… 感涙の行動に「まるで別猫」「こんな日が来るなんて」
  7. /nl/articles/2404/24/news017.jpg メルカリで300円の紙モノセットを買ってみたら…… 出品者のあたたかな心遣いに「利益は考えていないんでしょうね」「見ててわくわくします」
  8. /nl/articles/2404/23/news185.jpg 子どもに高級キーボードのパーツを捨てられた → 公式の“先読みしすぎた対応”が話題「そういうこともあろうかと」
  9. /nl/articles/2401/18/news015.jpg 巨大深海魚のぶっとい毒針に刺され5時間後、体がとんでもないことに…… 衝撃の経過報告に「死なないで」
  10. /nl/articles/2404/22/news124.jpg ダイソー「マルチ万能ほうき」が家事ラクの救世主 名前負け知らずの便利さに「これやばっ!!」「220円に驚き」の声
先週の総合アクセスTOP10
  1. 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  2. 富山県警のX投稿に登場の女性白バイ隊員に過去一注目集まる「可愛い過ぎて、取締り情報が入ってこない」
  3. 2カ月赤ちゃん、おばあちゃんに少々強引な寝かしつけをされると…… コントのようなオチに「爆笑!」「可愛すぎて無事昇天」
  4. 異世界転生したローソン出現 ラスボスに挑む前のショップみたいで「合成かと思った」「日本にあるんだ」
  5. 【今日の計算】「8+9÷3−5」を計算せよ
  6. 21歳の無名アイドル、ビジュアル拡散で「あの頃の橋本環奈すぎる」とSNS騒然 「実物の方が可愛い」「見つかっちゃったなー」の声も
  7. 1歳赤ちゃん、寝る時間に現れないと思ったら…… 思わぬお仲間連れとご紹介が「めっちゃくちゃ可愛い」と220万再生
  8. 業務スーパーで買ったアサリに豆乳を与えて育てたら…… 数日後の摩訶不思議な変化に「面白い」「ちゃんと豆乳を食べてた?」
  9. 祖母から継いだ築80年の古家で「謎の箱」を発見→開けてみると…… 驚きの中身に「うわー!スゴッ」「かなり高価だと思いますよ!」
  10. 「ゆるキャン△」のイメージビジュアルそのまま? 工事の看板イラストが登場キャラにしか見えない 工事担当者「狙いました」
先月の総合アクセスTOP10
  1. フワちゃん、弟の結婚式で卑劣な行為に「席次見て名前覚えたからな」 めでたい場でのひんしゅく行為に「プライベート守ろうよ!」の声
  2. 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
  3. 水道検針員から直筆の手紙、驚き確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生「これはびっくり」「生命の逞しさ」
  4. フワちゃん、収録中に見えてはいけない“部位”が映る まさかの露出に「拡大しちゃったじゃん」「またか」の声
  5. スーパーで売れ残っていた半額のカニを水槽に入れてみたら…… 220万再生された涙の結末に「切なくなった」「凄く感動」
  6. 桐朋高等学校、78期卒業生の答辞に賛辞やまず 「只者ではない」「感動のあまり泣いて10回読み直した」
  7. 「これは悲劇」 ヤマザキ“春のパンまつり”シールを集めていたはずなのに…… 途中で気づいたまさかの現実
  8. 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
  9. がん闘病中の見栄晴、20回以上の放射線治療を受け変化が…… 「痛がゆくなって来ました」
  10. 食べ終わったパイナップルの葉を土に植えたら…… 3年半後、目を疑う結果に「もう、ただただ感動です」「ちょっと泣きそう」