藤倉航装に救命胴衣について聞いてみた:救命装備品一筋70年以上(1/3 ページ)
水難事故対策を怠るべからず。国内唯一の救命装備品専業メーカー・藤倉航装に救命胴衣についてうかがってきました。小惑星探査機「はやぶさ」に関した、アノ製品の話もあります。
救命胴衣着用で、7割がた助かるというデータも
皆さん救命胴衣、ライフジャケットについてどこまでご存じでしょうか? この夏のレジャーでお世話になったという方もいらっしゃるかもしれませんが、筆者は「なんか浮力があるベストでしょ?」とか、「何年も前にカヌーの体験をするときに着たなあ……」といった程度の知識しか持ち合わせていません。夏場になると必ず水の事故のニュースがありますし、海上保安庁のホームページ、海上保安庁マリンレジャーでも、各種マリンレジャーにおいて「ライフジャケットは常時、正しく着用」することを推奨しています。同ページの釣り中の事故発生状況(リンク先はPDF)でも海中転落事故の際、救命胴衣を着用していた場合の生存率は約69.7%で7割がた助かり、非着用時は約44.9%で半分以下の生存率となり、救命胴衣を着用していた場合の生存率が約1.6倍高いというデータもあります。筆者は釣りに行くこともあり川や海の近くに行くこともあるため、正しい救命胴衣の知識をつけるべく、設立昭和14年、救命装備品一筋70年以上、国内唯一の救命装備品専業メーカーである藤倉航装にお話をうかがってきました。
大きく分けで固型式と膨張式がある
救命胴衣と一言でいっても実は種類があるということで、予備知識が0に限りなく近い筆者のために、藤倉航装 営業部 営業2課 課長の梅木康成氏と同課の小泉慶氏にまずはそこから解説していだきました。それによると、救命胴衣の種類は大きく分けて固型式と膨張式の2種類があり、固型式は浮力体に柔軟性のある独立発砲体を使用しているベスト型のもの、膨張式は内部に仕込まれた気室(空気袋)がボンベの炭酸ガスによって膨らんで浮力を持つようになるものだそうです。
固型式と膨張式はどちらが優れているというのではなくどちらにも一長一短があり、固型式は破れなどに強く、多少表面が破損した程度では浮力が変わらないというのが長所ですが、形状がベストですから装着すると上半身が動かしにくくなり暑いという短所があります。それに対して膨張式は体を覆う部分が少ないので体を動かしやすく、固型式ほど暑くないという長所がありますが、内部の気室に万が一、穴が開くと浮力を得ることができなくなるという短所があります。もちろん空気袋が剥き出しになっているわけではなく、周囲はナイロン製のカバー布で覆われていますが、針などで突き刺したりタバコの火で溶けて穴が開くことがないとはいえないということです。
膨張式にも種類がある
さらに膨張式にも種類があります。先ほどのFN-50は膨張装置が右胸にありますが、FN-60では首の後ろにあります。これらもどちらが良いということではなく、例えば漁船ならどこが自分の持ち場なのか、操舵していることが多いのか網を引き上げるなどの作業が多いのかによって作業内容が変わってくるもの。その場合、周囲を確認するために頭を動かすことが多いのか、腕や上半身を動かすことが多いのか作業内容によって、より動作の邪魔にならない製品をチョイスすることになるのだそうです。邪魔にならないということでは、上半身ではなくウエストポーチのように腰に装着するタイプのものもあります。上半身がフリーになるので、上半身を動かす作業や腕を振る動作を繰り返すフィッシングなどに向いています。
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