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» 2012年12月14日 15時54分 UPDATE

売れるのには理由がある:クレーンゲーム機の定番中の定番、セガの「UFOキャッチャー」 (2/3)

[種子島健吉,ITmedia]

ほかのゲーム機との明らかな違い

 アミューズメント施設にあるゲームの機械を筐体と呼ぶが、その中でも景品が獲得できるゲーム機をプライズ機と呼ぶ。つまり、プライズ機とは画面内の電子的なキャラクターを操作したりするものではなく、実際にメカを操作して楽しむゲームのことを意味する。

 「プライズ機は、他のゲーム機と比べると長く使用されます。その間、プライズ(景品)や運営方法のトレンドが変わっていくので先を予想するのが難しいんです」と、深澤氏は「UFOキャッチャー」開発時の製品企画の難しさを指摘する。

 また運用方法でも、ほかのゲーム機と明らかに違う部分があるという。例えば、格闘ゲームなら格闘ゲーム、レーシングゲームならレーシングゲームが店舗に導入する前に完成していて、設置した後はポップなどを配置したり、難易度の調整をするぐらいしかオペレーター(アミューズメント施設運営者)サイドですることはない。

 「『UFOキャッチャー』は店舗に搬入された時点では何も中に入っておらず、棚の作り方やプライズの置き方など、ゲーム機を開発した我々だけでなく、オペレーターさんとの共同作業ではじめてプレイしてもらえる状態になるんです」と高杉氏は、ほかのゲームとはまた違った醍醐味が「UFOキャッチャー」にはあると説明する。

 設置して電源さえ入れればすぐ稼働できるほかのゲーム機よりも、運用の手間はかかる。しかし、手間はかかるが、そこがオペレーターの腕の見せどころでもあり、手間をかけた分だけプレイヤーの注目度も上がって、楽しんでもらえるようになる。手のかけがいのあるマシンが「UFOキャッチャー」なのだ。

土地柄、運用方法は足で確認

 日本全国、セガ直営店のみならず多数のアミューズメント施設、あるいはショッピングモールのゲームコーナーやデパートの屋上などなど、「UFOキャッチャー」の設置されている場所は数限りない。開発者としては、実際の使われ方をぜひ確認しておきたいところだが、ではいったいどうするのか? ズバリ、足で稼ぐというのが正解。「UFOキャッチャー」を求めて、飲み屋ならぬアミューズメント施設のハシゴである。

 「設置場所によって、まったく違った運用のされ方をしているので、出張に行くとなるだけ多くの場所を見に行くことにしています。とにかく足で稼ぐしかないので、気が付くと深夜ということもざらです。それでも、まだそこから『よしもう1軒行くぞ!』という感じですね」と深澤氏は、高杉氏と出張する際の定番エピソードを語ってくれた。

 それだけ数を見ると、やはり開発者でも驚くことがあるそうだ。今までで一番インパクトがあったのは「UFOキャッチャー」に小型の自転車が丸ごと入っていたのを見たとき。もちろん、自転車がそのままクレーンで持ち上がるはずもないのだが、「これはいったいどうやって取るのだろう?」と、一瞬開発者も悩んでしまったそうだ。

 また「UFOキャッチャー7」では、店舗側でデザインの装飾がしやすいようにビルボードが取り外せるように設計されており、出荷時は取り外された状態になっている。しかし、この出荷時状態のままで運営しているまさかの店舗が大阪にあったそうだ。現地で実際にそれを見た高杉氏は、「どうやら『剥き出しのライト類がまぶしいほどの明るさ』というところに目を付けたようでした。確かに遠くからでも良く目立ったのですが……」と、大阪人の想像を絶する運用方法に感心しつつ、絶句したそうだ。

失敗に真摯に向き合う

 運用方法があまたあり、オペレーターサイドが関与する部分も大きい、クレーンなど可動する部分も多い……これだけの要素があれば、やはり開発者の想定外の事態にならないほうがおかしい。売れている製品であり、出荷台数が多ければなおさらだろう。その点はどうかと尋ねるとやはりそれは「いろいろ起こる」そうだ。以下に例をあげてもらった。

 「UFOキャッチャー7」で電源を入れるたびにエラーが出るといわれて、そんなはずはないのだがと見に行ったところ、「ここまではいくらなんでも積まないだろう」というところにまでプライズが積まれていて、起動チェックの際にセンサーに引っかかってエラーになっていた。次の機種からはセンサーの位置を変えて、どこに積んでもエラーにならないように対応した。

「UFOキャッチャー8」を開発したとき、オペレーターさんに「遅いよ!」といわれてしまった。メカの動きは、前の機種と同じスピードだったのだが、可動範囲(特に高さ方向)が広がったために、次のプレイができるまでの時間が長くなって、結果として「遅い」と感じてしまうという理由だった。そのことから、次の機種ではスピードをアップした。

 アーム先端のツメの材質を金属製のものから樹脂製のものに変更したところ、なぜか旧機種の金属ツメを新型に付けて運用している施設がけっこうあった。実は、金属のツメを曲げることで微妙な調節をしていたのに樹脂製だとそれができなくなってしまったからだった。これはコストを下げるために樹脂製にしたわけではなく、運用する際にメンテナンスしやすいようにという工夫だったのだが、裏目に出てしまった。これだけ運用方法が多様化してくると、ロケテストなどでは思いもよらない事態になることもある。その後の機種は、金属製に戻した。

 ということで、やはり企画、設計段階、あるいはロケテストですべての状況を予想することは不可能。失敗は失敗として、可能であれば現場を確認しに行き、できるだけ迅速にベストな対応をするという真摯な姿勢こそが、安心して導入され続ける「UFOキャッチャー」シリーズの土台を築いてきたといえるのではないだろうか。

取れるマシンを作っています!

 ここまではメーカー、オペレーターからの視点の話が多かったのだが、ちょっとここでプレイヤーの立場から質問してみた。「ちゃんと、取れるように作っているんですか?」あるいは、「もしかしたら、取れないように作っているんじゃないですか?」ということである。

 それに対して、深澤氏は「取れなかったら、誰もプレイしてくれなくなってしまいますから(笑)」と前置きしながら、「セガとしては、ちゃんとプライズを取ることができるようなマシンを作っています。もちろん、アミューズメント施設としては商売なので、儲からないと困りますが、基本的には『取れるかどうかのドキドキ感を楽しんでプレイしてもらえるように』ということを一番に考えて製品企画しています」とのお答え。

 1回100円で取れてしまうとアミューズメント施設の赤字になり、商売が成り立たなくなってしまう。しかし、あまりに取れないと今度はプレイヤーがリピートしてくれなくなってしまうので、そのバランスが難しいところなのだ。深澤氏は、その両方の気持ちが分かる筐体メーカー(セガには、アミューズメント施設運営者という側面もあるが)からできるアドバイスとして、「お店では買えないアミューズメント施設限定のプライズが取れるかどうか、というところを楽しんでもらえれば……。どうしても何か持ち帰りたいときには、小さめの景品やお菓子を狙うのがおすすめです。取りやすい設定になっていることが多いようです」と、楽しむ秘訣を教えてくれた。

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