サンライズのアニメーションはこうして作られている:売れるのには理由がある(3/3 ページ)
基本的に社内スタッフに情熱を持ってその企画にあたれるものがいれば、作品は成立すると思っています。「アイカツ!」や「ラブライブ!」がサンライズの作品です、というとビックリする方もいます。でも、今までそういったジャンルの作品をやっていなくても、誰か「やってみたい!」というプロデューサーがいればトライできるチャンスが、サンライズにはちゃんとあるんですよ。
―― 企画を考えるうえで、「あっ」と驚くものを、ということ以外に大事にされていることはありますか?
河口氏 やはり、アニメーションはエンタテインメントですので、ちょっとだけでも非日常を楽しんでもらえるように、「没入できるような完成された世界観を作る」「一緒にいたいと思ってもらえるぐらい、魅力的なキャラを登場させる」ということは心がけています。
「コードギアス」シリーズに限っていえば、「今の大人が作った世界のままでいいの?」というメッセージがあるんです。「しょうがないや」というのではなく、「自分で変えることができるんじゃないの?」ということですね。
現実の問題をアニメーションで解決することはできません。大震災の後片付けをモビルスーツ(ロボット)でできるわけじゃありませんし、もし、そういう内容の作品を作っても現実の瓦礫は片付きませんから。そういうことではなく、若い人がアクションを起こすきっかけになるような、ちょっとした応援の気持ちを込めているつもりです。
信頼関係、実績が重要なのはアニメも同じ
―― 外部から見ていると、「機動戦士ガンダム」のサンライズだからオリジナルでも企画が通るんでしょ? とか、バンダイナムコグループだから玩具展開がすんなりいくんでしょ? と、うがった見方をしてしまわないでもないのですが。
河口氏 確かに「ガンダム」の名を冠する企画であれば、そういったことがないとはいいません。でも、ことオリジナル作品であれば、厳しい目で見られるのはサンライズでも同じですよ。弊社がバンダイナムコグループの一員だからといって、ガンプラのようにたくさんのメカが、必ずプラモデル化されると決まっていることもないですし。
どんな製品やサービスでもそうだと思うのですが、それまでの担当者同士のお付き合い、例えば私の場合だと、「キングゲイナー」からテレビ版「コードギアス」を制作する中で、共同制作メーカーのプロデューサーと信頼関係が築けたことが大きいです。いきなり劇場で上映する「コードギアス」が企画できたということではなく、そこにいたるまで、テレビ放送時の視聴率、DVDやBDの販売数、関連玩具の販売実績などをコツコツと積み重ねた結果なんです。
ただやはり企画する者、プロデューサーの責任は重大で、毎回「失敗したらやめよう」という気持ちでやっています。実はテレビの「コードギアス」という企画も、先が見えないものだったんです。話が進むに従って、どんどんキャラが増え、群像劇の様相を呈してきたんですね。そうするとどういうことが起きるかというと、担当声優さんはもちろん増えますし、毎回、新たな場所が登場したりして、実写でいえばセットの使い回しができなくなっていくんです。
毎回、新セットを作るわけですから、これはもうお金も時間もかかります。谷口監督もそれは重々承知で「もっとゆるい話にもできるよ?」という提案もしていただいたのですが、同時にそうすることで「(この作品の)魂は抜けるけどね……」とも。そのときすでに、皆を「あっ」といわせるおもしろい作品になるのは間違いないという手応えがあったので、そのまま進めました。
最終的に制作費も厳しいことになったのですが、それ以上に制作時間だけはいかんともしがたかったので、テレビ局のプロデューサーの方には、納品がギリギリになってご迷惑をおかけしました。
DVD、BDの売上げが収益の大部分
―― 「コードギアス 亡国のアキト」はどういった楽しみ方ができますか? 全4章構成ということですが、とりあえず今夏の第2章ではどうなっていくのでしょうか?
河口氏 アニメとしてはもちろんのこと、映画として楽しめる作品になっています。テレビではできないような表現方法も使っていて……元々、劇場版の赤根監督がそういった映画的な手法が得意なんです。テレビ版と同じものを作っても、「おもしろかったけど、谷口監督のほうがもっとよかったね」ということになってしまいますから。新しい主人公、新しいヒロインの物語という以外に、そういった意味でもテレビ版とは違いがあるんです。
第1章でも序盤に主人公アキトが操るロボット兵器、ナイトメアフレーム「アレクサンダ」の変形高速戦闘シーンが盛り込まれていますが、第2章ではさらにバトルアクションも濃いものを用意しています。登場キャラクターたちのバックボーンも明らかになっていって、児童虐待の過去があったりするのですが……それをどう少年少女たちがはねのけていくのかといったところも見どころになります。年金問題、不正規雇用などいろいろな問題が現代社会にはあるわけですが、フィクションなんだけれども、そういったことを考えてもらえるように、実はそんなテーマも根底にはあるんですね。作品を観て、世の中が理不尽なら理不尽なりに変えていけるんだという意識、そんなエネルギーのようなものを持って帰ってもらえればうれしいです。
企画によって変わる部分もありますが「コードギアス」シリーズでいうと、DVD、BDの売上げというのが収益の大部分なんです。劇場に足を運んでいただいて、DVD、BDを購入いただけると、また次のオリジナル企画作品をお目にかけることができるようになりますので、ぜひともお願いします(笑)。DVD、BDのパッケージもいろいろと工夫して、引っ越しのとき捨てられてしまわない「これは持っていかなきゃ」と思ってもらえる、宝物になるようなものにしたいと毎回、考えていますので。
関連記事
- 売れるのには理由がある:温水洗浄便座の代表的ブランド「ウォシュレット」普及の秘密を聞いた
温水洗浄便座の代表的ブランドとなっているTOTOの「ウォッシュレット」。しかし、実は温水洗浄便座が最初に製品化されたのは海外で、国産としても2番手だった。 - 売れるのには理由がある:子供から大人まで幅広い顧客層、タミヤの「ミニ四駆」
タミヤの「ミニ四駆」といったらこの人、大会での実況などを務める「MCガッツ」氏に話をうかがった。子供から大人にまでファン層が広がっているという「ミニ四駆」ヒットの秘密に迫る。 - 売れるのには理由がある:空気を汚さず乾燥もしにくい、デロンギのオイルヒーターは温める概念が違う
デロンギといえばオイルヒーター、オイルヒーターといえばデロンギ。そこまでに定着し、他社を寄せ付けないオイルヒーターの定番中の定番だが、愛用される理由はどのあたりにあるのだろうか? - 売れるのには理由がある 番外編:プレイヤーを置き去りにしていた? 「UFOキャッチャー」だけじゃない、セガの大型筐体ラインアップ
「創造は生命」がセガの社是。アーケードゲームに新技術を導入するという使命感を。 - 売れるのには理由がある:クレーンゲーム機の定番中の定番、セガの「UFOキャッチャー」
クレーンゲームの定番、セガの「UFOキャッチャー」命名の秘密から、その歴史、プレイヤーのみならず、店舗運営者にも支持されるその理由を聞いた。開発者直伝の正しい「UFOキャッチャー」の楽しみ方も。 - 散歩するガジェット:「カロリズム エキスパート」で、デスクワークからジョギングまで活動量を計ろう
7月に発売されたタニタの活動量計「カロリズム エキスパート」。「カロリズム」に新開発のカロリズムエンジンPROを搭載した、よりスポーティなモデルということなので、1週間データを計測してみました。 - 売れるのには理由がある:女子中高生に絶大なる支持を得る、フリューのプリントシール機
いまやショッピングモールのゲームコーナー、アミューズメントスポットに欠かせない存在なのが、プリントシール機。その分野で新たな製品を開発し続け、女子中高生に絶大なる支持を得ているのがフリューだ。 - 原寸大装甲騎兵:頑張ればあなたも作れる! 大日本技研「PDFクラフト スコープドッグ 1/1」がワンフェスに登場【追記あり】
「装甲騎兵ボトムズ」30周年の2013年。ワンフェスにて、原寸大スコープドッグが販売される。それも誰でも(頑張れば)作れるペーパークラフトなんです! - ガンダム、ボトムズ……メカを描き続ける男の40年 「超・大河原邦男展」は門外不出の資料も集結
レジェンド・オブ・メカデザインの軌跡がここに。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
-
1歳赤ちゃん、寝る時間に現れないと思ったら…… 思わぬお仲間連れとご紹介が「めっちゃくちゃ可愛い」と220万再生
-
【今日の計算】「8+9÷3−5」を計算せよ
-
「プロ野球チップス」で誤字 伊藤大海投手を「176m」と記載してカルビー謝罪
-
「ママ友襲来10分前」→さぁ、どうする……? 大爆笑の“あるある”再現が400万再生突破「腹ちぎれました」「バナナ食べんでもええやん」
-
富山県警のX投稿に登場の女性白バイ隊員に過去一注目集まる「可愛い過ぎて、取締り情報が入ってこない」
-
21歳の無名アイドル、ビジュアル拡散で「あの頃の橋本環奈すぎる」とSNS騒然 「実物の方が可愛い」「見つかっちゃったなー」の声も
-
「大型魚の餌に!!」 熱帯魚店の“思わず目を疑うPOP”に恐怖 「サメでも飼うの?」
-
2カ月赤ちゃん、おばあちゃんに手をスリスリされた瞬間…… 愛と幸せあふれる空間に笑顔になる「これぞ天使だ」
-
漂う違法感 東京に戻る息子へ持たせた“大量のブツ”に「九州人あるある」「帰省からの帰りいつもこれ」の声
-
異世界転生したローソン出現 ラスボスに挑む前のショップみたいで「合成かと思った」「日本にあるんだ」
- 生後2カ月の赤ちゃんにママが話しかけると、次の瞬間かわいすぎる反応が! 「天使」「なんか泣けてきた」と癒やされた人続出
- 車検に出した軽トラの荷台に乗っていた生後3日の子猫、保護して育てた3年後…… 驚きの現在に大反響「天使が女神に」「目眩が」
- 安達祐実、成人した娘とのレアな2ショット披露 「ママには見えない!」「とても似ててびっくり」と驚きの声
- 兄が10歳下の妹に無償の愛を注ぎ続けて2年後…… ママも驚きの光景に「尊すぎてコメントが浮かばねぇ」「最高のにいに」
- “これが普通だと思っていた柴犬のお風呂の入れ方が特殊すぎた” 予想外の体勢に「今まで観てきた入浴法で1番かわいい」
- 「虎に翼」、新キャラの俳優に注目が集まる 「綺麗な人だね」「まさか日本のドラマでお目にかかれるとは!」
- 「葬送のフリーレン」ユーベルのコスプレがまるで実写版 「ジト目が完璧」と27万いいねの好評
- お花見でも大活躍する「2杯のドリンクを片手で持つ方法」 目からウロコの裏技に「えぇーーすごーーい」「やってみます!」
- 弟から出産祝いをもらったら…… 爆笑の悲劇に「めっちゃおもろ可愛いんだけどw」「笑いこらえるの無理でした」
- 3カ月の赤ちゃん、パパに“しーっ”とされた反応が「可愛いぁぁぁぁ」と200万再生 無邪気なお返事としぐさから幸せがあふれ出す
- フワちゃん、弟の結婚式で卑劣な行為に「席次見て名前覚えたからな」 めでたい場でのひんしゅく行為に「プライベート守ろうよ!」の声
- 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
- 水道検針員から直筆の手紙、驚き確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生「これはびっくり」「生命の逞しさ」
- フワちゃん、収録中に見えてはいけない“部位”が映る まさかの露出に「拡大しちゃったじゃん」「またか」の声
- スーパーで売れ残っていた半額のカニを水槽に入れてみたら…… 220万再生された涙の結末に「切なくなった」「凄く感動」
- 桐朋高等学校、78期卒業生の答辞に賛辞やまず 「只者ではない」「感動のあまり泣いて10回読み直した」
- 「これは悲劇」 ヤマザキ“春のパンまつり”シールを集めていたはずなのに…… 途中で気づいたまさかの現実
- 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
- がん闘病中の見栄晴、20回以上の放射線治療を受け変化が…… 「痛がゆくなって来ました」
- 食べ終わったパイナップルの葉を土に植えたら…… 3年半後、目を疑う結果に「もう、ただただ感動です」「ちょっと泣きそう」