第20回:プレイヤー同士でいざ勝負! 対戦プレイはなぜ面白いのか?:なぜ、人はゲームにハマルのか?(2/4 ページ)
プレイヤーが対戦ゲームにますますハマッてしまう絶妙な仕掛けの数々
スポーツゲームであれば多くの人が対戦ルールを理解しやすい一方、それ以外の独創的な対戦ゲームにもとことんハマってしまうプレイヤーが続出するのはいったいなぜなのでしょうか? ここからは、ゲーム開発者たちが知恵を結集させて作り上げた、対戦ゲームならではの面白いアイデアの数々を見ていくことにしましょう。
アーケードゲームにおいて、デモ画面中によく表示されるのが「INSERT COIN」という言葉。直訳すれば「コインを入れてください」という意味で、つまり道行く人に遊んでほしいと無言のアピールをしているわけですが、ただこれだけでは正直インパクトに欠けている感は否めません。
実は先ほどご紹介した「ストII」シリーズでは、ユーザーに対戦プレイをうながすためのある斬新なアイデアを盛り込んでいます。そのアイデアとは、キャラクター選択時にスタートボタンをしばらく押しっ放しにしてからゲームを始めると、画面上部(※空いているプレイヤー側の得点表示部分)に、「求む! 対戦プレイ」などというメッセージを「INSERT COIN」と交互に映し出されるようにしたことです(※)。
以下のムービーは、1992年に発売されたシリーズ第2弾の「ストリートファイターII'」でメッセージを変更したときとそうでないときの様子を収録したものです。これを見ていただければ、メッセージをちょっと追加しただけで見た目の印象がガラっと変わるのがお分かりになるでしょう。ゲームを初めて見た人に対していつでも乱入対戦ができるシステムになっていることを教えるとともに、プレイ中の人が「俺と対戦しようぜ!」などと通り掛かった人にいちいち声をかけずにすむ効果もあるというワケですね。
今でこそ対戦相手がいつでも好きなタイミングで乱入できる対戦システムはごく当たり前に存在しますが、昔のゲームは1人プレイでゲームを始めると、そのプレイヤーがいったんゲームオーバーになるまで2人対戦プレイが遊べない設計になっているケースが少なくありませんでした。ですから、いつでも対戦相手を歓迎することを示すメッセージを導入しただけでも画期的なことだったのです。
また、「ストII」シリーズでは誰かが乱入した瞬間に「HERE COMES A NEW CHALLENGER!」(※挑戦者現わる、の意味)と表示する演出を盛り込んだのも素晴らしいアイデアだったと筆者は思います。なぜならたったこれだけのメッセージでも、プレイヤーは一瞬にして「おっ、来たな。かかってこいや!」とか、「あっ、乱入されちゃった。勝てるかなぁ……」などといったように、CPU戦とはまた違った緊張感が味わえるからです。実際、筆者も「ストII」などでよく遊んでいた時代はCPU戦に夢中で別のプレイヤーが近付いていたことに気づかず、上記のようなメッセージが突然画面に現れてビックリした経験が何度となくあります。
このような演出は同時代に登場した多くのアーケード用対戦ゲームにも採用され、SNK(現:SNKプレイモア)が発売した「龍虎の拳」や「サムライスピリッツ」、あるいはセガの「バーチャファイター」やナムコの「鉄拳」などの各シリーズでも定番の演出となりました。
(※写真は「ストリートファイターII'」「サムライスピリッツ」「バーチャファイター4 エボリューション」)
※「ストリートファイターII'」:PS2版「カプコン クラシックス コレクション」を使用
※「サムライスピリッツ」:Wiiバーチャルコンソール版を使用
※「バーチャファイター4 エボリューション」:PS2版を使用
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Oriniginal Game (C)SEGA (C)SEGA-AM2/SEGA,2001,2003
ビデオゲームにおいてスコア(得点)の存在は総じて欠かせないものですが、「バーチャファイター」や「鉄拳」シリーズにはこのシステムがありません(※)。ですが、得点の代わりにプレイヤーの実力や達成感を示す指標はちゃんと用意されています。
対戦格闘ゲーム好きの方であればもうお分かりですね? これらのゲームでは、勝ち残ったプレイヤー側に「WINS:3」とか「5連勝中」などと連勝記録を表示することによって、プレイヤーに充足感を与えているのです。また一部のシリーズ作品に限られますが、連勝を続けるプレイヤーが出現すると「連勝記録を止めろ!」などというメッセージが新たに表示されたり、連勝数といっしょに特殊なマークが出現する演出なども加えてさらに見た目を楽しくしているタイトルも存在します。
連勝記録を表示すると、現在プレイ中の人の強さがある程度分かるようになるメリットも生じます。もし相手の連勝した数と自分の最高連勝記録がほぼ同じであれば、「よし、俺がアイツをつぶしてやる!」などと他のプレイヤーの挑戦意欲をあおるとともに、初心者が相手の力量を悟れずにうっかり乱入してあっという間に負かされずにすむというワケですね。また「サムライスピリッツ」シリーズなどでは、デモ画面中に勝ち抜き人数の多いプレイヤーのランキングを表示するアイデアを導入した作品もあります。これもハイスコア表示と同様に、そのお店にはどのくらい上手なプレイヤーがいるのかを示す効果があり、プレイヤーに再びお店に足を運ばせるための工夫の一環であると言えるでしょう。
※「バーチャファイター4 エボリューション」:PS2版を使用
※「鉄拳3」:PS版を使用
Oriniginal Game (C)SEGA (C)SEGA-AM2/SEGA,2001,2003
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