第15回:「待って、もう1回!!」 いつの間にかゲームがやめられなくなるフシギな呪文、「コンティニュー」のスッゴイ仕掛けなぜ、人はゲームにハマルのか?(2/4 ページ)

» 2012年01月06日 10時44分 公開
[鴫原盛之,ITmedia]

ついつい100円玉が減ってしまう! 負けん気魂に火をつける「カウントダウンシステム」

 ところで、みなさんはゲームセンターやデパートなどでアーケードゲームを遊んだ経験はありますか? アクションゲームを遊んでいたら主人公が敵にやられてしまったり、対戦で負けてしまったときには「CONTINUE?」などと書かれたメッセージとともに数字がカウントダウンされていく演出を、実際に遊んだことのある人であれば一度は見たことがあるのではないかと思います。

 このカウントダウン方式をゲーム史上初めて導入した作品が正直分かっていないのですが、筆者が初めて利用したのはセガが1985年に発売したシューティングゲーム、「スペースハリアー」でした。本作では、主人公のハリアーのストックがゼロになると10秒間のカウントダウンが始まり、制限時間中に急いでコインを入れればその場から再スタートができるようになっていました。

 つまり、たった10秒という短い時間のうちに「さっきやられたあの敵をやっつけたい!」「今月のお小遣いはもう少ないし、どうしよう……」などというように、プレイヤーは独り心の中で何度も葛藤を繰り返しながら決断を迫られるワケです。このような緊張感を生み出すのも、アーケードゲームならではの醍醐味の1つであると言えるのではないでしょうか?

画像画像画像 「スペースハリアー」はカウントダウン中にクレジットを投入するとその場から再スタートができるようになっていました
※Wiiバーチャルコンソール版を使用
(C)SEGA

 カウントダウン中にユニークな演出をしていたことで筆者が今なお思い出深いのは、1987年にアイレムが発売したシューティングゲーム「R-TYPE」です。

 本作ではゲームオーバーになると画面が真っ暗の背景に切り替わり、大きく映し出された数字が減るたびに不気味なサウンドが鳴り、プレイヤーに対してかなりの緊迫感を与えてきます。単なるカウントダウンをしているだけなのに、「このままだと、自分のせいで彼らは敵の軍門に下ってしまう!」「待ってろ、今助けに行くゼ!」などとプレイヤーの脳裏にはさまざまな妄想(?)を想起させ、まるで物語の主人公になったかのような気分になりついついゲームを続けたくなってしまいます。本作をご存知ない方は、ぜひ以下のムービーを再生して凝りに凝った演出のカウントダウンの様子をご覧になってみてください。

 ちなみに、「R-TYPE」以外にも「イメージファイト」をはじめ、アイレムが同時代に発売された各タイトルには同じようなカウントダウンの演出が登場します。コンティニュー画面1つをとっても、調べてみるとメーカーの個性がいろいろと出ているのが実に面白いですよね!

※Wiiバーチャルコンソール版「R-TYPE I」を使用
(C)HUDSON SOFT
(C)IREM SOFTWARE ENGINEERING INC.

 過去の当コラムでもたびたび紹介している、カプコンが1984年に発売したシューティングゲームの「1942」にも、カウントダウン中にプレイを始めると最後にやられたステージから遊べるコンティニューができる機能がありました(※)。ただしコンティニューを利用するためには、ショットボタンを押しながらスタートボタンを押すという操作方法をあらかじめ知っていることが必要でした。これは最初のページで例に挙げた「ドルアーガの塔」でも同様です。

 「1942」では、コンティニューの方法はカウントダウン中の画面に表示されるのですが、すべて英語で書かれているので当時子どもだった筆者は当初それが何を意味しているかまったく理解できませんでした。最初に遊んだ日からしばらく後になって、あるとき画面内に「FIRE」という単語の存在に初めて気が付き、「もしかしてショットボタンを押しながらスタートすると何か起きるのかな?」とヒラメき、早速試してみたらコンティニューができることを偶然発見することができました。

 本作に限らず、昔のアーケードゲームはインストカードにコンティニューのやり方を書いていないケースが少なからずありました。また当時のコンピュータの性能上の問題などから、画面内に日本語の表示がほとんど出てこないこともあって、コンティニュー機能の存在を気づかずにずっと遊んでいた方は案外多かったのではないかと推察されます。

※筆者注:最終面のみ例外でコンティニューができないようになっています。
画像画像画像 「1942」にもコンティニュー機能がありましたが、子どもにはおよそ理解不能な英語でしか説明が表示されないため、当時はあまり認知されていなかった印象です
※プレイステーション2版「カプコン クラシックス コレクション」を使用
(C)CAPCOM CO., LTD. 2005,2006,
(C)CAPCOM U.S.A., INC. 2005,2006 ALL RIGHTS RESERVED.

 もう1つ、秀逸なカウントダウンの演出として忘れられないのが、1989年に同じくカプコンが発売したいわゆるベルトアクションゲームの代表作である「ファイナルファイト」。本作では主人公が敵にやられてストックがゼロになると、ダイナマイトの目前で縄で縛られて身動きがとれない主人公の絵が表示されます。そして、残りタイムが少なくなるたびに導火線がどんどん燃えて短くなり、タイマーがゼロすなわちコンティニュー受付時間が終了するとドカンと鳴ってゲームオーバーになります。

 この絶妙の演出によって、もしコンティニューしなければ主人公が無念の最期を遂げ、なおかつプレイヤーに対してこれ以上ないほどの敗北・屈辱感を与えることになるため、ついつい財布のヒモを緩めることになります。今あらためてムービーを見ても、タイマーが少なくなるにつれて主人公の表情が変わっていく絶妙の演出はお見事です!

 さらに、1991年に登場して大ヒットした対戦格闘ゲーム「ストリートファイターII」では、CPU戦で相手に負けると顔が傷だらけになった主人公とともに必殺技の出し方などの攻略アドバイスが同時に表示されるようになっていました。この演出も、プレイヤーに対して「そうか、そんな方法があったのか! ヨシ、早速試してみよう!」という気分にさせてコンティニューを促す効果があったのではないかと思われます。

※プレイステーション2版「カプコン クラシックス コレクション」を使用。
(C)CAPCOM CO., LTD. 2005,2006,
(C)CAPCOM U.S.A., INC. 2005,2006 ALL RIGHTS RESERVED.

画像画像画像 「ストリートファイターII」では、その場で攻略のヒントを教えてくれることでプレイヤーにコンティニューさせようという意図があったのでは?
※プレイステーション2版「カプコン クラシックス コレクション」を使用
(C)CAPCOM CO., LTD. 2005,2006,
(C)CAPCOM U.S.A., INC. 2005,2006 ALL RIGHTS RESERVED.

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2405/01/news138.jpg イオンモールで販売「シフォンケーキ」にカビ発生、5000個回収へ “下痢”の報告で調査中……出店企業が謝罪
  2. /nl/articles/2402/21/news158.jpg 業務スーパーの“高コスパ”人気冷凍商品に「基準値超え添加物」 約1万5000個販売……自主回収を実施
  3. /nl/articles/2405/01/news092.jpg “スケスケ成人式コーデ”が物議のモデル、「3度見される服」を披露 「コレは見ちゃうわ」「洗っても大丈夫なのか」の声
  4. /nl/articles/2405/01/news095.jpg 秋元康、AKB48卒業の柏木由紀に送った手紙が物議 “冒頭の一文”に「昭和丸出し」「嫌すぎる」
  5. /nl/articles/2405/01/news013.jpg IKEAの新作カーテンが「家中これにしたい」ほどすてき!→どうやって付けているの? 垢抜けインテリア術に視線集中「すっごいかわいい」「色味が最高」
  6. /nl/articles/2405/01/news093.jpg 500円玉が1つ入る「桔梗のお花ケース」が100万件表示超え! 折り紙1枚で作れる簡単さに「お小遣いあげるときに便利」「美しい〜!」
  7. /nl/articles/2404/30/news015.jpg 【今日の計算】「500×99」を計算せよ
  8. /nl/articles/2404/30/news165.jpg 「これは変態だ」 職人が“鉄の塊”から作った「はぐれメタル」がガチすぎる 狂気の手作業に驚き「いかれてるw」
  9. /nl/articles/2405/01/news104.jpg 「そっち使うの?!」「これは天才」 さびだらけの鉄くぎをぐつぐつ煮込むと……? DIYに役立つ“まさかの使い道”が200万再生
  10. /nl/articles/2405/02/news013.jpg 2歳娘、自分のバースデーフォトをセルフタイマーで…… プロ顔負けの仕上がりに「すごーーーーーーー!!」「天才すぎます」と称賛の声
先週の総合アクセスTOP10
  1. 釣りに行こうとしたら、海岸に子猫が打ち上げられていて…… 保護後、予想だにしない展開に「神様降臨」「涙が止まりません」
  2. 身長174センチの女性アイドルに「ここは女性専用車両です!!!」 電車内で突如怒られ「声か、、、」と嘆き 「理不尽すぎる」と反響の声
  3. しぶとい雑草“ドクダミ”を生やさない超簡単な方法が115万再生! 除草剤を使わない画期的な対策に「スゴイ発見」
  4. 天井裏から変な音がする→スマホを突っ込んで撮影したら…… 映った“とんでもねぇ”モノに「恐ろしい」「何これ」と騒然の196万表示!
  5. 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  6. 誰も教えてくれなかった“裁縫の裏ワザ”が目からウロコ 200万再生のライフハックに「画期的」と称賛【海外】
  7. 「電車の中で見ちゃダメ」「笑ったww」 実家からLINE「子ヤギがすばしっこくて捕まらない」→送られてきた衝撃姿が320万表示!
  8. 顔の半分は童顔メイク、もう半分の仕上がりに驚がく 同一人物と思えない半顔メイクが860万再生「凄いねメイクの力」
  9. 元「AKB48」メンバー、整形に250万円の近影に驚きの声「整形しすぎてて原型なくなっててびびった」
  10. スーパーで買ったレモンの種が1年後…… まさかの結果が635万再生「さっそくやってみます」「すごーい!」「手品みたい」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 庭に植えて大後悔した“悪魔の木”を自称ポンコツ主婦が伐採したら…… 恐怖のラストに「ゾッとした」「驚愕すぎて笑っちゃいましたw」
  2. 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  3. 生後2カ月の赤ちゃんにママが話しかけると、次の瞬間かわいすぎる反応が! 「天使」「なんか泣けてきた」と癒やされた人続出
  4. 「歩行も困難…言動もままならず」黒沢年雄、妻・街田リーヌの病状明かす 介護施設入所も「急激に壊れていく…」
  5. 車検に出した軽トラの荷台に乗っていた生後3日の子猫、保護して育てた3年後…… 驚きの現在に大反響「天使が女神に」「目眩が」
  6. 「虎に翼」、新キャラの俳優に注目が集まる 「綺麗な人だね」「まさか日本のドラマでお目にかかれるとは!」
  7. 釣りに行こうとしたら、海岸に子猫が打ち上げられていて…… 保護後、予想だにしない展開に「神様降臨」「涙が止まりません」
  8. 身長174センチの女性アイドルに「ここは女性専用車両です!!!」 電車内で突如怒られ「声か、、、」と嘆き 「理不尽すぎる」と反響の声
  9. 築152年の古民家にある、ジャングル化した水路を掃除したら…… 現れた驚きの光景に「腰が抜けました」「ビックリ!」「先代の方々が」
  10. 「葬送のフリーレン」ユーベルのコスプレがまるで実写版 「ジト目が完璧」と27万いいねの好評