第15回:「待って、もう1回!!」 いつの間にかゲームがやめられなくなるフシギな呪文、「コンティニュー」のスッゴイ仕掛け:なぜ、人はゲームにハマルのか?(4/4 ページ)
協力プレイの導入はコンティニュー数の増加も狙いの1つ
ビデオゲームは1人で黙々とハイスコアの更新を狙うだけでなく、プレイヤー同士で協力しながら遊ぶのもまた楽しいものです。1人ではなかなか攻略できない場面でも、パートナーのサポートを得てうまくクリアできたときの喜びは格別です。
古いアーケードゲームでは、任天堂の「マリオブラザーズ」をはじめ、カプコンのシューティングゲーム「エグゼドエグゼス」やSNKの「怒」シリーズ等々、2人同時にプレイすると楽しくかつ攻略がスムーズに進むことは、実際に遊んだ経験がある人であればよくご存知のことでしょう。これらの作品は、最初は1人でスタートした場合であっても途中でコインを投入すればもう1人のプレイヤーがいつでも参加できるのがミソ。途中からでも始められるようにすることで、参加機会の増加すなわちインカムアップにつなげるというワケですね!
ゲームをただ見ている人に対して、ぜひ遊んでもらおうと協力プレイを促す面白い演出をしていたのが、タイトーが1986年に発売したアクションゲーム「バブルボブル」。本作では、1人プレイ時に空いている方の主人公キャラが「INSERT COIN!」「TO JOIN!!」と書かれたプラカードを掲げ、ぜひ遊んでほしいと盛んにアピールを繰り返します。そしてコインを入れてスタートボタンを押すと、両手を挙げて「THANK YOU!」とお礼を言ってからゲーム開始となります。
以下のムービーをご覧になればお分かりになるかと思いますが、主人公キャラクターのアクションがとても可愛らしくできているので、「カネをよこせ!」という嫌味さを一切感じさせないのもプレイヤーへの訴求に大いに役立っていると言えそうです。さらに本作の場合は、2人プレイで最終面をクリアしないと真のエンディングが見られない仕組みになっているため、これも協力プレイのアピールすなわちインカム向上の要因になっていたのでは、と推察されます。
今ではめっきり少なくなりましたが、昔はアーケードゲームの定番だったクイズゲームも、ほぼ例外なく協力プレイシステムの導入によって人気、すなわちインカムを稼いでいました。多くのクイズゲームは、一定数のお手つき(誤答)をするとゲームオーバーになるルールになっていましたので、例えば3択や4択形式のクイズであれば1人のプレイヤーが間違えた場合には、自動的にパートナーが2または3択の高確率で正解できるようになる、すなわち先のステージへ進みやすくなるのです。
また、協力プレイの途中でゲームオーバーになったときには、「せっかくここまで進んだのに、途中で離脱すると相手に何だか申し訳ないな……」という気分になってしまい、ついついコンティニューを繰り返してしまいます。人間心理を巧みに突いた(?)、実に見事なゲームにハマル仕組みですよね!
※写真は1992年にナムコが発売した「爆裂クイズ 魔Q大冒険」です
(C)1992 NAMCO LTD., ALL RIGHTS RESERVED
2人プレイのときにだけ利用できるフィーチャーを盛り込み、協力プレイの魅力をアピールする例もあります。
例えば、コナミが1985年に発売したアーケード用シューティングゲーム「ツインビー」では、2人同時プレイ時にお互いの自機をくっつけると強力なショットが撃てる合体攻撃が使えるようになっていました。また、1993年に東亜プランが発売したシューティングゲーム「バツグン」では、2人のプレイヤーが同時にボンバーを発射すると、より強力な合体ボンバーに変化して敵に大ダメージを与えられるアイデアも盛り込まれていました。
しかし、シューティングゲームの場合は他のアクションおよびクイズゲームに比べると同時プレイを楽しむユーザーは昔から圧倒的に少ない印象を受けます。これはシューティング好きは1人で黙々と腕を磨くのが好きなタイプが多いせいなのでしょうか? 理由は定かではありませんが、このあたりも今後の当コラムにおける研究課題となるかもしれませんね……。
以上、コンティニューにまつわるお話をお読みになったご感想はいかがでしたか? 冒頭でも申しましたが、こうして見ると実に奥の深い世界であることがお分かりいただけたのではないでしょうか。プレイヤーの参加意欲をいかにあおって売上をアップさせるのか、そのために編み出された数々のアイデアはまさに先人たちの知恵の結晶であり、これらを最初に考案した方々には敬意を表さずにはいられません。
ここでもうひとつ、みなさんにぜひ覚えておいていただきたいことがあります。それは大多数のアーケードゲームに導入されている、コンティニュー受付時間中にコインを入れると、その瞬間にカウントダウンしていたタイマーがリセットされるアイデアの存在です。これによって、プレイヤーがスタートボタンの場所を探したり財布をポケットやカバンにしまうための時間的余裕を与え、精神的なプレッシャーから解放させる効果があるのです。今度ゲームセンターに行く機会があったときには、ぜひこの機能をみなさん自身の目で確かめてみてください。些細なことですが、このようなノウハウの蓄積がアーケードゲームの売上を少なからず支えているのです。
ゲーム開発ではなく営業畑出身の筆者が申し上げるのはおこがましいかもしれませんが、このようなちょとしたアイデアにもユーザーすなわちお客様への気配りの意味があることをぜひとも覚えておいていただきたいですね。
それでは、今回のお話はここまで。また次回お会いしましょう!
今回登場したソフトはココで遊べます!
- 「ドルアーガの塔」:PSP用ソフト「ナムコミュージアムVOL.2」、PS用ソフト「ナムコミュージアムVOL.3」
- 「ドラゴンバスター」:PSP用ソフト「ナムコミュージアムVOL.2」、PS用ソフト「ナムコミュージアムVOL.2」
- 「スペースハリアー」:Wiiバーチャルコンソール
- 「R-TYPE」:Wiiバーチャルコンソール(PCエンジン版の「R-TYPE I」および「R-TYPE II」)
- 「1942」:Wiiバーチャルコンソール、PS2用ソフト「カプコン クラシックス コレクション」
- 「ファイナルファイト」:Wiiバーチャルコンソール(スーパーファミコン版)、PS2用ソフト「カプコン クラシックス コレクション」
- 「ストリートファイターII」:Wiiバーチャルコンソール(スーパーファミコン版)、PS2用ソフト「カプコン クラシックス コレクション」
- 「首領蜂」:PS用ソフト「首領蜂」ほか
- 「アルゴスの戦士」:Wiiバーチャルコンソール
- 「ダライアス外伝」:PS2用ソフト「タイトーメモリーズ上巻」
- 「スーパーマリオブラザーズ」:Wiiバーチャルコンソール
- 「バブルボブル」:Wiiバーチャルコンソール(ファミコン版)、PS2用ソフト「タイトーメモリーズ上巻」
- 「ツインビー」:Wiiバーチャルコンソール(ファミコン版)、PSP用ソフト「ツインビーPORTABLE」
著者プロフィール
鴫原 盛之 Morihiro Shigihara
1993年よりゲーム雑誌および攻略本などでライター活動を開始。その後、某メーカーでのグッズ・店舗開発や携帯コンテンツの営業、ゲームセンター店長などの職を経て、2004年よりフリーに。現在は各種雑誌やwebサイトでの執筆をはじめ、某アーケードゲームの開発なども手掛ける。著書は「ファミダス ファミコン裏技編」(マイクロマガジン社)、「ゲーム職人第1集 だから日本のゲームは面白い」(同)の他、共著によるゲーム攻略本・関連書籍を多数執筆。近刊は共著「デジタルゲームの教科書 知っておくべきゲーム業界最新トレンド」(ソフトバンククリエイティブ)がある。
Twitterは「@m_shigihara」です。
著者近況
先日、アスキー・メディアワークスより発売された攻略本「スーパーマリオランド3Dランド ザ・コンプリートガイド」におきまして、筆者は攻略ページの執筆を一部担当させていただきました。よろしければぜひお買い求め下さい!
今やビデオゲームを楽しむうえでは欠かせないコンティニュー機能ですが、まさかこれほど奥の深いものだったとは……。執筆しながらいろいろと調査している最中にも、次から次へと新発見が続いたため当初の構想よりもはるかに文章量がマリオ大増殖状態になってしまいました(笑)。
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